本気
ミイラのようだったその体を生身にまで昇華させた魔神は自信満々な笑みを浮かべて僕の前に立つ。
「本当は、この不完全な肉体で我の本来の姿をさらしたくはなかったのだが……仕方ない」
その様子からは絶対の自信を感じることができる。
「人の子が想像以上に使ったのだからな……仕方ない。我も本気を出せねばいけないようなのでな」
「見た目が可愛くなっただけでそんな自信満々になるとは、中々に初々しい奴だなぁ?」
「は、はぁ!?い、いきなり何を言っておるのだ!」
特に深い意味もなく雑に告げた言葉に魔神は一気に頬を赤らめて動揺の声を上げる……こいつ、たかが人に容姿を褒められたくらいで顔を赤くするなよ。
「と、ともかくだ!人の子よ!この我が本気を見せたからにはもう終わりだとも!既にその命運は尽きた……だが、安心したまえ。その肉体は我が上手く使ってやろう。女でないことだけが気がかりではあるが、ここにまで来てしまえば関係あるまい」
「お前如きに僕の身体は使いこなせないと思うがなぁ?」
僕の身体は生まれながらに特別であったし、転生など色々なことがあったことからこの体は非常に複雑なことになっているだろう。
「ハッ。人の身で操れるものをこの神たる我が操れないわけがないだろう」
「たとえ、神であるとそこまで弱いのでは僕の相手にならないと思うけどね?」
「ふっ……まぁ、今はそれだけ自信満々に語っていると良い。どうせ、その余裕はなくなるのだから」
「それはつまり?」
「ここで、人の子は我にコテンパンにやられるということであるとも!」
僕から少しばかりの距離を保ったところで向かいあっていたはずの魔神はいつの間にか、その姿を僕の目の前にまで移動していた。
それだけでなく、既に四つある腕がうち二つを組み、僕を上からたたく準備を完了させている。
「はふぅんっ」
そして、僕は頭を魔神の手によって強く殴打され、そのまま何とも言えない声を漏らしてしまうのだった。
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