人型

 急な、あまりにも急なミュートスの言葉に僕たちは驚き、疑問の声を抱く。


「ど、ど、ど、どういうわけなの!?」


 マリーヌは大慌てし始めて、


「何を思っているのかは知らないが、魔神を恐れる必要なんてないぞ……何故だが、私たち悪魔の中の頂点。我々悪魔とは格が違い、決して人間では勝てないはずの化け物をおもちゃにするような化け物がここにいるしな」


「本当にネージュは人間じゃないわよね。はっきりに言って、頭おかしいと思っているわ。本当にどうなっているのかしらね?ネージュって何なの?実は私たち龍族だったり?」


 リリスとグリムは当たり前のように僕を人外に認定し、


「い、生贄!?」


 フィアは生贄という強い言葉に恐怖心を抱く。


「……ごめんなさい」


 そして、この流れの中で一人だけ離れた場所に位置し、一歩距離を置いていたエウリアが謝罪の言葉を口にする。


「……」


 そんなエウリアの表情と声色。

 初登場時にはどこかミステリアスな雰囲気を漂わせ、ラスボスかのような雰囲気まで出しておきながらすっかり弱弱になり、善人である可能性がかなり高まっている彼女の今の表情と声色から見て、僕は嫌な予感を抱く。

 何か、何か……とんでもない話が飛び出してきそうな……。


「ど、どういうことなの!?リリスとグリム……?だっけか?どこから来たのかかイマイチわからない二人も言っていたけど!」


「「……」」


「ネージュは強いのよ!魔神だって倒せる!私たちが今までのように、前に頑張ったことで繋いだ絆のおかげで、お姉ちゃんはこれからも生きていけるの!なのに、なんで、急に生贄になるだなんて!ネージュのことが信用できないの!?」


 マリーヌはミュートスへと熱心に言葉を投げかける。


「……彼らは」


 そんな必死なマリーヌの言葉に対して、ミュートスは静かに、だが今にも泣きそうな表情でそっとその指の先を地面の下ではいつくばっている黒い粘性人型実体へと向ける。


「あそこにいる、黒い人影たちは、私が治めていた王国領の民たちなのです」


 そして、その勢いをそのままにミュートスはとんでもない事実を告げるのだった。

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