動揺

 僕と魔神。

 その両者にとって完全に意識外からやってきた乱入者。


「しめたッ!!!」


「まずっ!?」

 

 それに対してわずかに固まってしまった後、すぐさま僕と魔神が行動を開始する。

 

「その体ッ!いただくぞぉー!」


 魔神が欲するのは体。

 己がこの世界に滞在し続けるための身体のためである。

 そんな魔神が己の身体として狙っていたミュートスがこの場へとやってきたのだ……彼女の狙いなど一つに決まっているだろう。


「っぶねぇ!」


 全力で駆け抜け、何とか魔神よりも先にミュートスの前に立った僕は彼女を守るように何とか結界を貼ることに成功する。


「ぐふっ」

 

 その代わりとして勢い余って突っ込んできた魔神の手によって僕の上半身が消しとばされる。


「えっ?」


 だが、この程度の傷であればすぐに再生することが可能である。


「えっ?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええ!?」


 すぐさま僕は体を切り返して魔神の脇腹へと回し蹴りを叩き込んでそのまま彼女を吹き飛ばす。


「そこをどけぇ!人の子よぉ!我はその人間を己の身体としてもらうのだ!いくら人の子と言えど、神が本懐を邪魔するなど決して許されることではないぞぉ!」


 それに対して魔神はこれまでにない勢いで声を荒げながら僕へと声を投げかけてくくる。


「ほざけ、神ぃ!誰が聞くか」


 そんな魔神の言葉を僕は一蹴すると共に大量の魔法を発動する。


「ぐっ、ぬぅ……」

 

 千にも届き得る魔法の雨を前に魔神は防戦一方。

 少しばかり前のめりになって、まともに防御態勢を取れていなかった魔神を追い詰めていく。


「……んっ」


 そんな今のうちにここへとミュートスが乱入してくることになった要因。

 こんなところにあった転移魔法陣を徹底的に破壊してやる。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 そんなことしている間に魔神は迎撃態勢を整えて、僕の魔法をすべて余裕そうに悉く撃ち落とすようになる。


「忌々しい、人の子が、どれだけ我の邪魔をすると言うのだ」


 僕が魔法の発動を辞めると共に静寂が訪れたこの場で、魔神は吐き捨てるように言葉を告げるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る