激闘
魔法の研究を怠らず、常に魔法について考え、己の魔法に関する技術を日夜磨いている僕ではあるが。
「うぉぉ!?」
それでも、僕が自分の中で何よりも得意とするのは魔法を使った遠距離戦ではなく徒手空拳を用いた近距離戦である。
「何だ!?この、人の子……わっ!」
想定外とも言える僕の接近と上段からのかかと落としを喰らって地面へと叩き落とされた魔神は地面に倒れた状態で困惑の声を漏らす。
いきなり徒手空拳に移った僕に追いついてないんだろう。
「……ッ」
だが、それでも僕は手を緩めるつもりはない。
魔神の前にまで降り立った僕はそのまま腰を捻った勢いのままに正拳突きを繰り出す。
「くっ!」
それに対して素早く魔神は三つの腕を動かして防御態勢を取る。
「ぬぉっ!?」
だが、そんなもので僕は止まらない。
三つの腕ごと魔神を大いに後退させてその態勢を崩させる。
「すぅー」
そこからは僕のワンサイドゲームだ。
息を止めて呼吸の隙間すらも作らない僕の連撃がまず魔神の三つの腕を弾き飛ばし、そこから流れるように骨と皮しかないような魔神の胴体に拳の雨を降らせていく。
「おぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!?」
「手ごたえは大してないな」
そんな連撃から五分。
常に拳を浴びせ続けた僕は手を止めて首をかしげる。
「おぉ……ごふっ、げほっ」
魔神が床に倒れ、そのダメージで血を吐く中でも僕は自分の拳を見ながら頭を回す。
様々な魔法を拳に重ねがけし、叩き続けたのだが、感触はさほど良くない。
肉体と魂にも傷を与えた……でも、致命的なまでは程遠い。
「この、人の子ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアア!!!」
そんな僕に対して地面に倒れ伏していた魔神が途端に動きだしてこちらの腹へと蹴りを叩き込んでくる。
「おっと」
それを受けて僕の体は跳ね上がる。
「らぁぁぁぁぁ!」
そんな僕へと魔神は三つの腕をうまく使って拳を叩き込み続け、無抵抗の僕を空へと打ち上げていく。
「ふんっ!」
そして、最後に魔神は蹴りを叩き込み、地面へと叩き落とす。
「よっと」
後頭部に受けた重い蹴りを喰らいながらも空中で態勢を整えた僕は地面に着地し、二つの足でその場に立つ。
「喰らえ、人の子よ……ッ!」
そんあ僕に対して魔神は自分の中にあるエネルギーを一つの凝縮して圧縮したエネルギー弾を作り出す。
「神の一撃を見よ」
シンプルな技であり、だからこそある純粋な暴力の化身。
それを前にして僕はそっと右手を前に出して構える。
「流石にちょっと痛いな」
「……ばか、な」
そのまま魔神の一撃を右手だけで受け切った僕は流石に感じた痛みに眉を顰めながら、腕をパタパタさせるのだった。
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