言語

 既に魔神もエウリアも籠の中。

 その手下である黒い粘性人型実体はまともに動けない。

 これで、ようやく場は整ったというところだろう。


「ちょっと、邪魔」


 僕は自分の側に立っていたリリスとマリーヌ、フィア、お姉ちゃんの四人を強引に結界で囲んでそのまま自分から離したところに隔離させる。


「ついでにグリムも」


 そして、ついでに僕の中にいたグリムの外に出して結界の中へと捨てる。


「うぇぇぇぇぇええええええええええええ!?本当についですぎる!?」


 身軽になり、たった一人の状態で僕は魔神の前に立つ。


「……ふぅむ。どういうことだ?人間。この結界の強度、我らに匹敵する」


 その場に立ちながら魔法でもって結界を破壊しようとしている魔神は自分の思惑が上手くいかないことに対して首をかしげている。


「興味ない、既に僕は己の体を幾度もバラしているし、研究し尽くした後だ。そんなことよりはまず、君の話をしよう」


 まずは手ごろにある肉体から。

 一番最初の人体実験における被検体は僕である。

 既にもうこれ以上ないほどに調べ尽くしている……そんな、既に僕がわかっていることについての議論なんてどうでもいい。

 そんなことよりも、未知だ。


「ほら、攻撃を頼むよ。魔神くん」


 僕は結界も張らずに仁王立ちで立ち、魔神の前で両手を広げる。


「……初めて見る、タイプの人間だ」


「だろうね?」


「だが、我とて時間はない。こちらとしてもお前にさほど興味があるわけではないのだ……早々に終わらせてもらおう。貊??繧医?∽ココ髢」

 

 何か、聞き取ることがまず出来ない不明瞭な言語が告げられると共に僕の体を衝撃が通り過ぎ去っていく。


「終わったか……何もなく、ただの肉片に。然り、人に抗うことあり得ぬ。されど、何故?」


 僕であっても理解出来そうにない言語。

 だがしかし、


「ははは……あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」


 その言語を、僕の古き記憶は確かに覚えていた。


「ビンゴだぁ、ビンゴ!近づいたァ!……いいねぇ、いいねぇぇぇええええええええええええええええええええええええええええ!!!」


 僕は笑い声をけたけた上げながら体を起き上がらせる。


「なっ……ッ!」


 恐らくは魔神の魔法であろうものを喰らい、その全身を消滅させていた僕は己の体を再生させながらゆっくりと自分の体を起こす。


「良いねぇ、もっとやろうか」


 そして、元の姿へと何事もなく戻って見せた僕は驚愕する魔神の前で笑みを浮かべて見せるのだった。

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