わけ
死んだはずのエウリアが自分の前に立ち、息をしている。
それは確かに疑問しかないところであろう。
「確かに、確実に君は生きている様子……死者だったはずの存在が生きているというのも気になるねぇ」
僕だって気になる。
一応、これでも前世では死んでいるからね。この世界でも己の目的が果たせずに死ぬ可能性なんていくらでもある。
僕とて死を回避する術があるならぜひとも聞きたいところである。
「……」
だが、疑問の答えを待つ僕とリリスの期待に反して、エウリアは頑として口を開こうとはしていない。
「……あっ、そういえば。エウリアの口はネージュが閉じさせていたじゃない、魔法で。それを解かなきゃ喋れるわけがないじゃない」
そんな中で、はっとしたようにリリスが言葉を続ける。
「……」
リリスの呟くに対して、ゆっくりとエウリアは首を縦に振る。
「ほざけ。お前、とっくの昔に僕の魔法の束縛から抜けているでしょ、今更口を閉じ続けるなよ?誤魔化すな、時間を稼ぐな、別に僕は優しくと共何ともないぞ」
既にエウリアは僕の魔法の束縛から逃れ、リリスの話で時折相槌を入れていた。
そんな人物が今更口を閉じ続けるなんて許されるはずがないよね。
「答えろよ、エウリア……それとも、拷問でもして吐かせるか?」
僕は魔法で作った異空間を開き、そこに仕舞っている拷問危惧を取り出すべく腕を伸ばす。
「それは辞めて」
だが、その手を止めるのはリリスである。
「こ、この子の拷問は本当に危ないから!今すぐ口を開いた方が良いよ!!!お願い!」
「……私は」
リリスの絶叫を受けてようやく、エウリアが口を開く。
「特に答えることなんてないわ」
だが、それに対するエウリアの答えは決してこちらの期待するようなものではなかった。
「え、エウリア……」
それに対してリリスはショックを受けたような表情を浮かべ、
「へぇ?」
僕は笑みを浮かべる。
口を割らないと言うならば良いだろう。
割らせるまでである……相手の口を割らせる方法であれば単純な拷問から魔法を絡めた拷問までいくらでもある。
どれだけ拷問して、体を痛め抜いて、口を割らせてやろう。
「ふふふ……」
少しでも心を弱く持った瞬間に精神を乗っ取ってやるよ。
そんな心持ちで僕が自分の手を掴んでいたリリスを跳ねのけて、拷問器具の一つを取り出す。
「何だ?この粗雑な結界は」
そのタイミングで。
「……ほう?」
この場へと、新しい声が響いてくると共に僕が張り巡らせていた結界が音を立てて崩れていくのだった。
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