魔女

 エウリアの動きを止め、リリスに命令を下す。

 この場の支配権、流れは僕が掌握したままで話を進めていく。


「……あれは、遥か昔のことよ」


 そんな中で、リリスが口を開いて言葉を話し始める。


「あまり長くなってもしょうがないから簡潔に話すけど……まず、悪魔が普段。こことは違う魔界に住んでいることは知っているわよね」


「うん、わかっているよ」


 僕はリリスの言葉に頷く。

 悪魔たちが暮らす魔界、それは普通に空に浮かんでいるお月様に存在している。

 お月様の中に魔界が存在しているのだ……意味が分からない?それは僕も思うが、魔法があるこの世界に常識など存在しないのが常である。


「私をそんな魔界からこちらの世界へと顕現させたのがエウリアで、そこにいる魔女なのよ」


「えぇ、そうね」


 リリスの言葉にエウリアは笑顔で頷く。


「私とエウリアの生活の話なんてつまらないだろうから省くわね?それでも、私は、一応エウリアの方に心を許していたのはまぎれようもない事実よ」


 悪魔の癖に人らしく、残虐ではない……それは、このエウリアの影響ということかな?


「そんな、私とエウリアの関係は突然終わったのよ。そこにいるエウリアの死によってね。元より、エウリアが何だったかわかるかしら?」


「僕と似たような感じか?」


「舐めるんじゃないわよ?エウリアがネージュのような鬼畜じみた実験を繰り返すマッドなわけないでしょう。いい加減にして頂戴」


「えっ……?」


 リリスの断言にエウリアが結構困惑しているんですけど、それは?色眼鏡使っていない?大丈夫?


「と、言いながらも一部は当たりよ。エウリアは疫病などに苦しむ人々を魔法で救うため、魔法の研究を続けていたわ。それでもある日、エウリアはこう呼ばれることになったわ」


 ここでリリスは言葉を止め、一呼吸置いてから再び口を開く。


「魔女、と」


 中世に大々的に行われた魔女狩り然り、地球において一切のいいイメージがない魔女という存在はこの異世界であってもそう変わらない。


「エウリアは、己が助けていたはずの人間に裏切られ、無残にも殺されたの。その後の私は知っての通り、エウリアの死に怒った私が暴れて、それでネージュの祖先に負けて封印された。それが私とエウリアの過去よ」


 ふむふむ……随分と、リリスは人間に対して面倒な感情を抱いていそうだ。

 己の友であったエウリアを裏切り、それでも彼女が愛していた人間を真に憎むことは出来なかった、そんなところか?


「……だからこそ、聞きたいの。貴方は死んだはず……そうでしょう?エウリア。なんで、貴方がここにいるの?」


 僕がそんなことを考えている間にも、リリスは改めてエウリアへと向き直り、率直な疑問をぶつけるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る