エウリア

 僕の前に佇む女性。

 その姿は実に美しいと言えるだろう。

 黒を基調とする美麗なドレスを身に纏い、その頭には角のように円錐形に尖っている魔女が被っているような黒のとんがり帽子が鎮座している。

 

 そんな黒に染められる衣装と対照的に女性の姿そのものは純白であった。

 真っ白肌に、腰にまで伸ばされる真っ白な髪。

 こちらを見つめる瞳も真っ白であり、当然彼女の白い肌にはその白を汚すほくろも肌のシミ、そばかすなどがあるわけがない。

 

 白く美しいその姿を黒で覆い隠す、そんな女性が僕の目の前で薄く笑う実体の姿であった。

 

「何者かな?」


「ふふふ……人に、名前を尋ねるときはまず自分から、と言いたいところだけど、私は生憎と君の名前は知っているのよねぇ。ネージュくん」


「待ってよ……待ってよ!!!魔女エウリアッ!」


 僕の素朴な疑問。

 名前は何かという疑問の答えは目の前の女性から帰ってくるよりも、横から飛び出してくる方が速かった。


「なるほど、エウリアか」


「無粋ねぇ?今、私はそこにいる興味深い少年と話していたのだけど……私が、魔法好きなのはあなたも知っているでしょう?なら、私の彼に対する興味に理解してくれるのではなくて?」


 名に頷く僕と素っ気ない対応を見せるエウリア。


「わかっている!だから……だから告げた!私を無視するな!どうして……どうして、お前……ッ!まだぁ」


 それに対してリリスは絶叫する。


「その疑問には答えてあげたいところだけど……おだまり」


 それに対してエウリアの反応は冷徹。

 恐らくは旧知の仲であろうリリスの口を強引に魔法で閉じてしまう。


「そこで黙っていな」


「僕の所有物なんだが?」


 いくら、目の前の被検体が興味深い生命であると言えども、リリスは僕の所有物である。

 それに対して軽々しく触れられるのはあまり僕としてもいい気分ではない。


「……ネージュくん?」


 リリスへと手をつけたエウリアに対して僕は拘束の魔法をかけ、その姿を縛る。

 それに対して彼女は冷や汗を垂らしながら、僕の名を呼ぶ。

 

「お前は興味深い被検体であり、色々と聞きたいことも多い……だが、その実力では僕の方が数段上だな。抜けられないだろ?拘束から」


 僕はエウリアを拘束したまま、彼女の手によって無理やり黙らされたリリスを開放する。


「ね、ネージュ」


「話せ、吐露しろ、リリス……貴様とその女の関係を。生憎と、僕は暇なのだ。時間を長く楽しみたい」


 そして、僕はリリスへと説明を求めるのだった。

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