戦果

 魔王の子宮。

 ガチガチの警備を固めながら日夜、復旧作業に取り組んでいる中で定期的に襲撃して魔族たちの復旧作業を無に帰すかのように罠をばら撒いている僕。

 そんなことをしている僕のせいで魔族が復旧作業を始めてから既に三か月。

 未だに魔族は自分たちの生命線とも言える魔王の子宮を罠地獄から解放することに失敗していた。

 今でも魔族が魔王の子宮に向かって飛べばその命を絶たれることになるだろう。


「これで十三人目」


 ということで今日も僕は楽に、逃げられることなく魔族を排除して回っていた。


「もうそろそろ潮時かなぁー」


 だが、こんなことをしているのももうそろそろ限界だろう。

 既に世界中に散っていた魔族はその多くが姿を消している。

 僕や、その他の有力者にタイマンで負けたり、軍勢を前に数で押し負けたり、慌てて王城の方へと逃げ帰っていたり。

 様々な要因で数を減らしている。


 魔王の子宮の方も最近は警備に血走った魔王本人がついていたりするため、これまでのように罠を張巡らせたりするのは難しい。

 これ以上、魔王の子宮を機能不全にしているのも限界だ。


 ここ最近は既に持ち場を離れてガチハイドし、魔王の子宮が復帰するのを待っている魔族も出始めている。

 もう魔族が転移を取り戻すのも近いだろう。


「まぁ、かなりの戦果はあったが」


 この三か月の間に魔王軍の四天王を始めとする多くの実力者は倒れ、人類は一度占領されてしまったミレニア小国を開放している。


『……やっぱ、人道を考えると戦争では弱いのだな』


『……そうね。あの非人道的な行いが結果的に大成功しているのだもの。人間って、醜いわぁ。同族同士で争うことなく大人しく戦争なんてせずに仲良くしていればいいのにぃ』


『……同族同士で争うなは私の方にもダメージ来るな。魔族など互いに争っているのが常であるがゆえに』


「ふっ。お前の負けだ。龍よ、多数決の原理。お前の種族の負けだ」


『なっ!?我ら誇り高き龍を侮辱すると言うのか?!』


「その誇り高き龍の一体が人間に負けて使役されているのだが」


『お前は人間名乗るな』


『そうよ、私はただ不幸な事故にあっただけ。人間なんかに使役されていないわ』


「えぇ……?僕はどうしようもないほどに神を信奉するただの人間だよ?僕以上に人間している人なんていないの」


 僕は二人の人間扱いしてこない発言に対して不満を抱きながら、いつも通り僕が魔族を倒して帰ってくるのを待っているマリーヌとフィアのいる馬車の方に向かって帰っていくのだった。

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