四天王

「我は偉大にして至高、絶対なる魔王様に仕えし魔王軍が精鋭!魔王軍四天王『傲岸な鎖』のシェーヌ!」


 魔族に占拠されている海峡の側に建てられている監視塔。

 そこへと単独で一切の警戒心もなく足を踏み入れた僕を歓迎したのは大きな声を上げる大柄な魔族。


「さぁ!今すぐにこの我の前へとその屍を晒してみせろぉぉぉぉぉぉおおおお!」

 

 そして、僕の方へと真っ直ぐ太く、長い鎖が向かってきていた。


「おぉ、気づくの速いな」

 

 堂々と正面の玄関から入ってきた僕。

 そこへといきなり、真っ直ぐ端から全力で突っ込んできた魔族に対して驚愕する僕は予めのうちから、リリスに唱えさせていた火炎魔法を発動させて魔法などによって最大限強化されていた鎖を一瞬にして溶かして見せる。


「なっ!?」


「光あれ」


 その鎖による一撃を圧倒的な火力で防いだ僕は自分で魔法を発動。

 シェーヌなどと名乗る魔王軍の四天王の一人らしい魔族をすっぽり飲み込むほどの魔法を向ける。


「お、おぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 僕の発動した魔法は彼の体を守っていた


「ぐ、ぐふ……た、耐えた?」


 体から血は流しているものの、致命傷どころか重篤な怪我すらも負わなかったシェーヌは拍子抜けといったような表情を浮かべる。


「逃げなかったかな?」


 だが、それによって僕が知りたかったことの全てを確認し終えた僕は困惑する彼をよそに笑みを浮かべて口を開く。


「まだ魔王の子宮は機能不全になっているままか」


「……ッ!そうかぁ!貴様!貴様が魔王様の御子宮へと土足で踏み入り、穢した不届き者かぁ!」


 続く僕の言葉を聞いたシェーヌはその表情を怒りへと染め上げ、激昂する。


「あぁ……そうだとも。なるほどね。魔王は魔族側へと一瞬で情報を伝達する手段も持っているというわけか、既に子宮が機能不全になっていることは周知の事実。であればその逆。回復しても速攻で知れ渡る感じかね」


「……あっ」


 だが、その次に発する僕の言葉を受けて自分が失言したことに気づいたシェーヌは焦ったような表情を浮かべる。


「ふっ、情報収集への協力ありがとう。もう十分だ」

 

 だが、そんな反応をしている暇など残念ながらシェーヌにはない。

 シェーヌとの会話の間にも僕はリリスとグリムの口を使って詠唱を唱え、それを終えている。


「さようなら」


 僕は二重詠唱によって発動した魔法。

 天より落ちる山をも砕く黒い稲雷をシェーヌへと向け、その体を一瞬にして消し炭へと変えてみせるのだった。

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