第三章 魔

配置転換

 魔族の最前線である砦と相対するハルマ小国。

 そこでの争いで勝利し、これまで攻め込まれていたのとは一点してミレニア小国の方へと逆侵攻しようとする中。

 僕は配置転換でミレニア小国との戦闘から世界各地に散っている魔族との戦闘にその役割を変えていた。


「……」


 そんな中で、僕は世界に散った魔族の方へと向かうべくハルマ小国の砦から馬車に乗って移動していた。


「ねぇ、本当に私たちの方についてきてよかったの?」


「え、えぇ!私はお二方のお力になれるの方が!」


「確かに……フィアが居てくれた方が助かるけどぉ、私たちはどっちも生活レベルが低いし。ネージュなんかそこら辺の虫食べて満腹とか宣うようなやつだし。それでも、自分の祖国の解放作戦が行われているのよ?」


「そこで私が活躍出来ることはないですから……それだったら、お二人のサポートに回った方が良いと思いまして……実力的には私のような足手まといを抱えていても問題なさそうですし」

 

 そんな僕の乗る馬車の中にはマリーヌとミレニア小国の生き残りであり姉妹のうちの妹の方であり、僕と牢屋での時間を共にした少女であるフィアが乗っていた。


「どうなの?ちゃんと彼女は守ってあげられそうなの?」


 三人が中に乗り、僕の魔法によって生み出された自動で進んでくれる馬がいる馬車の中でフラクション帝国の将兵から受け取った多くの貴重の魔導書を読んでいる僕に対してマリーヌが疑問の声を投げかけてくる。

 

「……まぁ、大丈夫なんじゃないか?」


 僕はそんな疑問の声に対して魔導書から視線を上げることなく答える。


「多分、僕が苦戦するとしたら魔王くらいじゃないかな?」


 あの日、本拠地で相対した魔王には勝てる気がしなかった。

 それでも、負ける気もしなかったので、僕が驕った構えを崩さずに横柄な態度を見せ続けた。

 その理由は単純で、出来るだけ魔族側を震撼させ、恐怖を植え付けたかったから。


「……うぅむ」


 僕は視線を魔導書の方から何もない宙へと向けて足を組む。

 魔王に対して、僕はしかと恐怖を与えられただろうか?僕とて底は見せていない、それでも魔王とて底を見せていない。

 今、どちらが優勢なのかもイマイチつかめていない。


「……まぁ、僕が気にすることでもないか」


 たとえ、魔王が人類を滅ぼすのだとしても僕にはあまり関係ない。

 魔法の研究さえ出来ればそれで十分だろう。


「……はっふ」

 

 僕はそんなことを考えながら視線を固定したまま、小さくあくびをするのだった。

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