一時的な平和
僕がやらかしたとも言える本拠地襲撃に伴った魔族側の撤退。
それによってハルマ小国には一時的な平和が訪れていた。
「さて、これよりどう動くか……であるな」
そんな中、砦の中でこれからどう動くかの会議が行われていた。
「これからの行動としてはここで守りを固めるか、ミレニア小国の解放のために攻勢へと討って出る、もしくは世界各地の重要拠点を襲撃、占拠している魔族の対処だろうか?」
「まずはミレニア小国の解放だろう。魔族どもに我ら人の大地を土足で入り込んだままにしておくわけにはいくまい」
「解放と言えども兵力はどうするのかね?ここにいる者たちではきついぞ」
会議では世界各国の重鎮たちが各々の意見をもって言葉を交わし合っていく。
「だが、我らには英雄たるネージュがいるのではないか?」
そんな会議の中で、人々たちの期待が僕に向けられる。
「……確かに、僕であればミレニア小国を救い出すだけの戦力はあると思うよ」
それを受けて僕は言葉を話し始める。
「それでも反対。僕はまず先に世界各地の重要地点へと襲撃してきている魔族を叩きたい。ミレニア小国の救出は僕抜きで、人が集まってから行うのがいいと思う」
「なんでよ!?早く、あの二人の国を救い出してあげたいじゃない!」
ミレニア小国の救出を後回しにする僕に対してマリーヌが驚きと共にツッコミを入れてくる。
「いや、今は彼らが逃げ帰るための装置に大量の罠を設置して機能不全にしてやっているから、もう既に逃げられない状況になっているんだよね。今なら世界各地に散らばっている強力な魔族たちを確実に殺すチャンスなんだよ、今後のために出来るだけ多くの実力者は削っておきたい」
それに対して僕は世界各地の魔族を優先する理由を話していく。
「……待って?何それ、そんなことしているの?」
「す、少し待って欲しい。逃げ帰るための装置とは……?」
「んん?」
「逃げ帰るための装置は言葉通り。彼ら魔族は自分の意思で転移を発動し、元の本拠地に帰れるんだよ。だから、僕の天撃も簡単に逃げられるし、普通に戦っても即死させないとあっさり逃げちゃうんだよ、魔族は。それでも今なら魔族を簡単に叩き潰すことが出来る。確実に殺せる」
混乱する多くの人たちに向けて僕はしっかりと説明していく。
その説明を聞いた者たちは各々で話し合い、言葉を交わし合い、その果てに僕の発言を指示する方向へと傾いていく。
「……少し待て」
僕の言葉を受けて変わりつつある空気。
そんな中でもフラクション帝国の将兵が皆を落ち着かせるために口を開く。
「それらすべてが真実かはわからないだろう。何故、それほどのことがわかるのだ?」
そして、多くの兵士の命を預ける将兵として、聞いておかなくてはならないことを口にする。
まぁ、この反応が当然であろう。
僕が話している情報はあまりにも大きいし、
だが、それを素直に話すつもりはないし、話せない。魔族を生きたまま使って門にしました!などと話せるわけがない。
普通に考えて。
「それは、僕だからね。英雄とはそういうものだろう?」
だからこそ、はぐらかすのが一番だ
魔族の本拠地襲撃並びに魔族の砦へと打ち込んだ天撃の功績……つまりは、砦で将兵たちが行った無礼をなかったことにするべく、フラクション帝国が渡してくれた最高位の名誉の証である英雄勲章を見せながら僕は告げるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます