魔王

 ロックオンした魔族たち一人一人へと発動した魔法、彼らの内側より起こった炸裂魔法は彼らすべてを一撃で消し炭へと変えた。


「……ッ!?」


 前にいた味方が一気に消滅するという事態にどんどん集まってきていた魔族たちの足が止まる。


「来ないならこっちから行くぞ」


 そんな魔族たちとの距離を僕は一気に詰め、そのすべてを魔法で薙ぎ払っていく。


「くっ……こ、こなくそっ!?」


「に、人間があまり粋がるなよッ!」


「臆するなァ!いけぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええ!!!」


 魔族たちはその身に幾つもの魔法を宿して真正面からぶつかってくるが、それらをすべて返り討ちにしていく。



『退きなさい』



 そんな中で、一つの女性の声が響くと共に目の前にいた魔族たちが消滅する。

 これは、転移……魔王の子宮の方に全員で逃亡したな?


「おやおや……全員強制逃亡。随分な臆病風に吹かれたもので。ところで?逃げた先で魔族たちが全滅していません?」


『……ッ』


「そこだな?」


 どこからか響いてくる声。

 その声の主の居場所を逆探知した僕は転移魔法を発動。


「ビンゴ」


 一瞬にして己の立つ場所を変えた僕は目の前にいる一人の人物へと視線を送る。


「……化け物が」

 

 パッと見としてはただの綺麗な女性にしか見えぬ、その人物。

 角も尾も翼もない、唯の女性……されど、その奥深くまで見通せばそれが通常の人ではないことなど手に取るように理解出来る。


「お前が魔王が」


「……誰が魔王だ、誰が。お前の方がよっぽど邪悪であろう!?我が子宮に数多の罠を仕掛けておったなっ!?」


「かっかっか、しかとすべて死んだか?」


「……ッ!どうやって来た、我の子宮にその隣の部屋からの報告連絡。どうやって、我が子宮へと繋いだ?」


「魔族に協力してもらっただけさ。そこまで非人道的なことはしていないから安心してくれていいよ」


「……ッ」


 僕の言葉に対して魔王は歯ぎしりし、僕へと殺意のこもった視線を向けてきながらも決して戦闘態勢に入ろうとしない。


「流石にここじゃ分が悪いよなぁ」


 ここは魔王軍の本拠地であり、防衛拠点である。

 先ほどから、この場所全体を一つの儀式場として機能させた一つの大規模な魔法が発動されようとしているのを僕は敏感に感じ取っていた。


「えぇ、まったくもってその通りよ……帰りなさい。この激情は、いつかの日のために取っておくわ」

 

 目の前に立つ魔王の身体が……否、それだけではなく世界全体が歪み、この場から押し出されるような感覚を強く与えられる。


「最後のおきみやげッ!」


「あぁぁぁあ!?」

 

 そんな中で、僕は最後の最後に特大魔法を一つ、ぶち上げてからこの場から強制退場させられるのだった。

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