快進撃

 魔族という種の根底。

 僕はそれが何かを研究によって明確に理解して見せた。


「ふんふんふーん」


 魔族。

 それを一言で言い表すなら魔王の子供、胎児となるだろう。

 魔王のDMAを元とし、外付けされた魔王の子宮より産まれた……否、未だ産まれぬ存在。

 その本質を魔王の子宮の中に持つ謎生物。

 未だ胎児のくせに当たり前のように外に出て、普通に死ぬ意味のわからない存在。

 だが、そんな存在だからこその転移。魔王の子宮との繋がりがある魔族だからこそ、彼らはノータイムで転移が可能なのだ。


「完成」


 だからこそ、出来ることがある。


「お手製転移門」


 彼らの体が外付けされた魔王の子宮、ひいてはそれが存在する本拠地までの転移のための魔方陣なわけだ。

 つまり、彼らの肉体を死なないように加工した上で拡張、固定化。

 魔改造を施すことで永続的に魔王軍の本拠地にまで通じる転移門を作れるのだ。


「見た目はこんなものでいいか」


 魔族の肉体を使って作った転移門。

 圧倒的に問題しかない字面ではあるが、それでも僕以外の人が使う可能性も考慮してその見た目の綺麗さには気を使った。

 まずは魔族の肉体を液体にしてにして中をくり抜いた宝石の中に流し込む。

 パッと見は綺麗な宝石でしかないそれを門の一番上に飾り、門の部分は完全な人口物、僕の作品だ。

こ れならば一目どころかじっくり見てもヤバさはないだろう。


『お、おぞましい……』


『こ、これが人のやること!?』


 だが、リリスとマグナからは非難しか寄せられなかった。


「魔族は人じゃないから法の範囲外だし、捕虜に関する条約も何も無い、どう扱おうと完全合法だ。それにお前らとてさほど変わらないだろう」


『げ、限度があるだろう……!これを縛ったロムルス家は勲章ものだろ!』


『や、辞めて!?私はこんな、こんな生命を冒涜するようなことはしてないよ!?』


「酷い言い草だ……まったく」


 僕は二人の言葉に対してあまり反論できないので、反論はしないが、それでも不満の言葉くらいは垂れておく。

 確かに倫理的には問題だが、完全合法なのだから良いだろう。


 他の環境も知らずに努力することを強要し、働くよう促しながら見下すことも、己の環境しか知らずに社会に対して暴力をチラつかせながら、挑戦している人たちに己を養うことも、全ては合法。

 他人など法の型に嵌めぬ限りただの消耗品……人などと言う消耗品を消費して何が悪い。


「よっと」


 内心で倫理観の欠けらも無い不満を垂れながしながら転移門をくぐって敵の本部へと転移する。


「とりあえずこれはあいさつ」


 そして、転移門から外付けされた魔王の子宮へと出てきた僕は、そのまま己が出てきた子宮へと魔法をぶち込むのだった。

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