天撃
僕の放った天撃。
それは確実に魔族の砦を完全に呑み込んで消滅させるどこか、その地下にまで巨大な穴を作って見せる。
「「「……」」」
「……ふぅーむ」
僕による一撃は完璧と言えるだろう。
確実に砦どころかその土地まで破壊してみせた。
「誰も殺した感覚がないな」
それでも、魔族を殺せた感覚が一切なかった……元々誰もいなかった、なんてことはないだろう。
直前に転移でも使って逃げたか、それとも何か種族的なものか。
「しかも、ちゃんと戻るな」
それだけではなかった。
砦があったその場所が、砦だけではなくその下の大地までもが盛り上がって砦を再生させていく。
「もう二、三発打ってみるか」
僕は再生しかけの砦へと更に天撃を追加。
どんどん地下深くにまで穴を広げていく。
「むぅ」
だが、それでも時間をかけながらではあるが再生してくる。
とはいえ、常時天撃を撃ち込み続けて砦を使い物にさせなくなることは出来そうだけど。
「……」
再生していく魔族の砦を横目に僕は上空から砦の方へと降りてくる。
「い、いきなりにも程があるわ!?も、もう少し順序、ってものがあるでしょ!」
「何を言うか。敵を叩く……これは良いことだろう?それに、だ。そもそもとして僕に魔法を使うよう要請したのは向こうさんだ」
僕は口をあんぐりと開けて固まっているフラクション帝国の将兵並びに兵士たちへと視線を送りながら口を開く。
「僕に責任を追及されても困るよ?本当に」
僕は悪くない……そう言えるように注意してここにまでやってきたのだから。
「そ、れ、で、も、よ!そもそもとして公的には貴方が私の部下なの!求めるは彼らの要請ではなく、私の要請!」
「はて?僕の認識としては魔族と戦うための剣となれ、という要請であったはず。僕は抜身の剣としてしっかりと役目を果たしたまで」
「なんでもう抜いてあるの……ッ!まだ私は抜いてないんだけど!」
「まぁ、良いじゃないか。別に困らないだろう?僕が魔族の砦に馬鹿すか魔法を叩き込んでも、敵を困らせるだけ」
「……も、問題なのは指揮系統の話と戦闘計画のズレが存在するという話でぇ」
「ほい、もう一発」
僕はマリーヌとの話の途中で天撃をもう一発。
今度こそという心意気で完全に再生した魔族の砦へと魔法を叩き込む。
「ちょっ!?」
それを前にしてマリーヌは驚愕の表情を浮かべて慌て始める。
「あれぇ?やっぱり魔族を殺せた気がしないなぁ」
そんなマリーヌを横目にこれまた手ごたえがなかったことに僕は首をかしげる。
「戦闘計画の狂いを心配するのはわかるけど、そも。僕が来た時点で崩壊しているから諦めてくれ」
そして、今にも激昂しそうしになっているマリーヌを宥めるように僕は口を開くのであった。
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