牢屋

 というわけで門番の手によって牢屋へとぶち込まれてしまった僕。


「へぇ、ずいぶんと面白いところなんだね。それで、それで?結局その後はどうなったの?」


「え、えっと……それでね?」


 そこで僕は元から牢屋に入れられていた一人の薄汚れた僕と同じくらいの歳の少女との会話に勤しんでいた。


「私の村にはデッカイ木の守り人さまがいたんだけど、魔王軍との戦いに負けちゃったの」


「むむ?負けたの?」


「そうなの……それで私たちは魔王軍がぶちまける瘴気を喰らっちゃって……何とか私とお姉ちゃんはここにまで逃げて来たんだけど、それでも魔王軍の瘴気のこともあって危険人物扱いで牢屋の中、っていうわけなの」


「ほーん」

 

 魔王軍の攻勢によって滅亡してしまった国の一つに暮らしていたという少女の話を聞いた僕は適当に相槌の言葉を口にする。

 それにしても、木の守り人。自然信仰の類が生み出した神に類するものかと思っていたけど、普通に思い違いだったのかな?

 負けたのを見ると普通に誰かが作った遺物となるだろう。


「……実はあんまり興味ない?」


「別にそんなことはないよ?木の守り人に、それと魔王軍の瘴気も気になる」


「わぁ、びっくりするくらい私に興味ない。これでもそこそこ同情出来る身の内だと思うんだけど」


「まぁ、割とよくある話だし。ドンマイ?みたいな……そんなことより魔王軍の瘴気が君に齎した影響について知りたいな」


 すべての者のためにある社会の構築なんて人が人である限り難しいからしょうがないよね。

 そんなことよりも魔法の方が重要だよ!


「……ど、ドライだよぉ。ちなみに瘴気については私も知らないよ。お腹の方に変な模様が出るだけだもん」


「へぇ、見せて?」


「まぁ、良いけどぉ……」


 僕の言葉に頷いた少女は自身の服を捲し上げて言う通りに複雑な模様が描かれたお腹を見せる。


「ひゃっ!?」


 そんな少女のお腹へと僕は一切の躊躇いなく手を伸ばして触れる。


「ふむふむ……これは、呪術の類だね。随分と面倒なことをするものだ。これはこのまま放置だとマズそう」

 

 触れるだけで大体のことを理解した僕は自分の手に魔力を流し込んでいく。


「まっ、言うて呪術と言えど名前が違うだけでやっていることは魔法と一緒。壊すのはなんてことないよね」


 そして、そのまま魔力を使って強引に魔法を破壊。

 完璧に機能不全にして見せる。


「おぉー!?す、すっごい、消えちゃった!?」


「あっ……まだ、動かないで?魔王軍の瘴気とやらが人体にどこまで深く影響したのかも調べたい」


「……いい、けどこばゆいのは辞めてね?」


「善処する」


 僕は少女のお腹に手を触れたまま彼女の中を隅々まで精査していく。


「……お前ら、もう少し考えてやれなかったのか?いくら危険人物とは言え、それでも幼い少女を牢屋にぶち込むのは親切心にかけるであろう。離れなどに隔離しておけばよかったことだろう。牢屋はあくまで犯罪者へのものだぞ」


 そんな折、僕と少女が閉じ込められている牢屋へと向かう廊下の方から声と

共に多くの声が近づいてくる。


「って、この声」


 僕は聞き覚えのある声を聞いた僕は視線を上げて廊下の方へと向ける。


「って、ぶぇぇぇぇええええええええ!?ここで何をしているの!?ネージュ!?」


「やぁ、マリーヌ」


 そして、多くの部下を引き連れて僕の前に己を呼びつけたマリーヌが姿を現すのだった。

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