予兆
「たーしゅけてぇぇぇぇぇぇええええええええええええええ!」
ミューが弱音を吐いていた頃、マリーヌの方では彼女のキャパを大きく超える大量の魔物の群れに追われて逃げ惑っている最中であった。
「よっこいしょ」
そんな彼女の前へと転移で現れた僕は地面を走り抜けるマリーヌを抱きかかえる形で受け止め、そのまま隣に立たせる。
「わわっ!?ネージュぅぅぅぅぅううううううううううううううう!!お前なら助けに来てくれると思っていたぞ!ありがとぉぉぉおおおおお!」
「わかったから耳元で騒がないで……■」
僕に腰に手を回された状態でなお、それを考えずに耳のすぐ隣で叫ぶマリーヌの大声に眉を顰めながらも一息で詠唱を完了させる。
その後に発動した魔法によって起こった竜巻が全ての魔物を巻き上げて空高くへと打ち上げていく。
そして、それとほぼ同タイミングでリリスの口を使って詠唱を完了させていた魔法も発動し、竜巻の中に大量の鉄の刃を投げ込んでいく。
「おぉぉぉ!血の竜巻、ブラッドトルネードだな!」
「……」
勝手に僕の魔法に厨二臭い別称を使わないで欲しい。
「……というか、魔物の数が多いな」
さっきの魔物で大半の魔物を蹴散らしたと思ったのだが、それでもかなりの魔物が残っている。
「何かおかしいな」
普通はこんなに魔物がいることはない。
後ろに何かいるだろう……魔物を操る者か、それとも大量の魔物が一つのエリアから全員抜け出さなきゃいけないような怪物が現れたか。
「……いきなり消えるけど、そのあとも派手だから合流するのは簡単ね」
「そうですね」
僕がしばらくの間、魔物を相手に無双しながら適当にバラバラにしていると、ド派手に舞う魔法を頼りにお姉ちゃんとミューが合流する。
「お姉ちゃん。明らかに魔物の数が多い。父上に連絡しておいて。ここで全部倒すも不毛。ここを離れて大元を探しに行きたい」
合流してきたお姉ちゃんに対して僕は声をかける。
「……あぁー。そうみたいだね」
その言葉に納得したお姉ちゃんは少しだけ離れたところで魔法を発動し、遠距離にいる父上へと連絡を取る。
「え、えっと……それで、私たちは何をすればいいでしょうか?」
「僕の近くにいておいて。下手に動くと危険だし……僕の隣が一番安全。ロムルス家の人間が一緒にいながら王族の方を亡くならせてしまったとか末代までの恥を晒したくはないから」
おずおずと尋ねて来たミューに対して僕は何もしないようにお願いする。
「……わ、私はそろそろ離してもらえるとぉ」
「あっ、ごめん。忘れていた」
そして、今の今まで彼女の腰に腕を回して隣に抱き寄せながらもその存在を忘れていたマリーヌに声をかけられた僕は素で忘れていたことを素直に謝罪して、手を離して解放する。
「ひどいっ!?」
それに対してマリーヌは絶叫の声を上げる。
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