魔物

「……何故?」


 転移のための魔道具の開発も終わり、個人的には大満足の一日を終えた次の日。

 僕はお姉ちゃん、マリーヌ、ミューの三人に誘われる形でロマルス家の魔物が多く生息している森の中へとやってきていた。


「実力の把握は大事でしょ!」


 不満げに声を上げる僕に対してマリーヌが人差し指を突きつけてきながら大きな声で告げる。


「……外に出てくるのはあまり好きじゃないんだけど」


 僕が魔法を研究する目的は戦いのためではない。

 相手に魔法をぶつけることで面白い反応が得られるというのならば別だが、何の意味もなく雑な魔物とかに魔法をぶつけたりは好きじゃない。

 だって、意味があまりないから。


『確かにこいつはあまり外に出していい人間ではないな……間違いなく』


「うるさい」


 僕はリリスの言葉を一蹴しながら、マリーヌの言葉に耳を傾ける。


「私たち四人は魔神を倒すための面々だよ!互いに実力を知っておくのも大事なんだよ!まったくもう!」


「……帰りたい」


 魔神自体には興味あるけど……マリーヌたちに興味があるかと言わればまた別である。


「まったくも───」


「あっ、魔物だ」


 僕はマリーヌの話の途中で魔物を発見し、魔道具を用いて詠唱もなしに転移魔法を発動。

 魔物のすぐ上空に転移してきた僕はそのままかかと落としで魔物の頭部を消し飛ばす。


「うん。奇襲という形であれば問題ない。魔法陣を隠したり、詠唱を隠したりで魔法の発動を誤魔化せる通常の魔法とは違う。絶対に魔法の発動がバレるという弱点を持つ魔道具であっても奇襲なら良い感じに働くな。魔神に対する手段の一つとして十分確立できたかな」


 死骸となった魔物の上に立つ僕は魔道具が上手く機能したことに対して満足げに頷く。


「よっと」


 そして、僕は魔物を手に持ったタイミングで転移を使って三人の元に帰ってくる。


「うわっ!?」


「……ッ?」


「も、もしかして……転移?」


「なんで昨日転移について話題にあがった二人が驚いていて、お姉ちゃんが思い至っているの?」


 転移魔法で戻ってきた僕への三者の反応を見てツッコミを入れる。


「転移魔法を解析して使えるようにしただけだよ、ほら。お姉ちゃん。魔物。こいつってば確か美味かったよね?後で食べるからもってて」


「いや、転移なんて普通使えるものじゃ……えぇ?で、魔物……いや、持つのはいいけどぉ。もしかして私の弟って天才なんていう言葉で解決できないだけの怪物ぶりを持っているんじゃないの……?」


 頭を抱えるお姉ちゃんは大人しく僕から魔物を受け取ってくれる。


「ね、ねぇ……お姉ちゃん。もしかして、私ってば想像以上に凄い人と出会っちゃった?」


「そ、そうかもしれません……転移魔法の解析とかどういうことでしょうか?普通に化け物なのかもしれないというか化け物ですね。これは。私たちはいるのでしょうか……?」


『悪魔である私から見ても魔神くらい倒せるんじゃないか?と思わせてくれるくらいには化け物だからな。こいつは』


「うっさいよ」


 マリーヌとミューのひそひそ話を横目に僕はリリスの言葉を一蹴するのだった。

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