完成!

 魔道具作りは実に順調に進んでいる。

 既に魔法陣を描けてはいる……あとは、良い感じに魔法陣を壊しさないように細心の注意を払いながら魔銀の形をピアスへと曲げていく。


「それで?実際にスピリトに勝てる確率はどれくらいあるんだ!?」


「え、えっとですね……まず、私一人で勝つのは無理でしょう。そして、ミューちゃんとマリーヌの二人も一人で戦って勝てるものでもないですね。三人がかりでも厳しいものがあるでしょう。しかも、私たち三人が出来る限りの飛躍的な成長を遂げ、国に仕える騎士なんて一瞬で倒せるようになった状態で、の話です」


「……そう、ですか」


「三人での話だろう!?それは!現状でさえも騎士を軽く倒して見せたネージュがいればどうだ!?」


「それは本人に聞いてみないとね……ねぇ?どうかな、ねー……じゅ」


 魔銀の変形はそこまで難易度が高いわけではない。

 だが、わざわざ彫った魔法陣を壊さないように変形させるのは至難の業だった。

 達人の技が必要になってくる。


「「……」」


「……ネージュ?」


「は、話は聞いて……いなさそうですね」


「ネージュぅ……仕方ない、すぅ」


 だが、僕であれば不可能というわけではない。

 いい感じに作業を進めることが出来ていた。


「ネージュぅぅぅぅぅううううううううううううううう!!!」


 魔銀を良い感じに変形させていた僕の耳でマリーヌが大きな声で叫ぶ。


「……はい?」


 彼女たちから呼ばれてしまった僕は一旦、魔道具作りの手を止めて視線を上にあげる。


「全然話、聞いてなかったよね?……ネージュが頼んできたことなのにぃ、また一から話してあげるね?」


 そんな僕へとお姉ちゃんが優し気な声色でまた一から説明すると告げてくれる。


「いや、いいです」


 そんなお姉ちゃんの言葉を僕は首を振って断る。


「お姉ちゃんが丁寧に魔神について教えてあげるね?」


「いや、いいです」


「魔神に関する情報は重要だと思うんだよ。相手は、強敵なんだよ?大人しく話を聞いておくべきだとお姉ちゃんは思うんだけどぉ……」


「いや、いいです」


 僕は幾度も断るのだが、それでもお姉ちゃんは一向に引こうとしない……別に興味はないのだが。

 それに、ネタバレは好きじゃない。


「ネージュ!一先ずはこれだけ聞かせて!」


 何度も食い下がってくるお姉ちゃんを押しのけてマリーヌが僕の前に出てくる。


「まず、勝つ自信はあるの?それだけは答えて!」


 そして、マリーヌは僕へと疑問の声を投げかけてくる。


「ん?お姉ちゃんは三人がかりであれば勝てなくともワンチャン戦うくらいはできる程度の相手であると踏んでいるんでしょう?」


 そんなマリーヌの疑問に対して僕も疑問で返す。


「どうなの?」


「えっ……うん、戦うくらいならばワンチャンでもなく、出来ると思うよ?」

  

 僕の疑問に対してお姉ちゃんは肯定を示す。

 うん、それなれば問題だろう。お姉ちゃんたちが今より十倍強くなって、それがダース単位で勝負を挑んできたとしても僕は完勝する自信がある。


「なら、僕は負けないよ」


 話をしながらも最終仕上げを行う手元を止めてなかった僕は魔道具の完成に合わせながら、はっきりと断言するのだった。

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