原作知識

 マリーヌとミューを連れてロマルス家へと戻ってきた僕はお姉ちゃんを呼びつけて、いつのもの書庫で彼女の魔神について語るよう頼んでいた。

 

「ふ、ふへへ……私が頼られているぅ……うぅん!そ、そうですね……それでは、私が魔神について知っていることを話していきますね」


 僕の言葉を受け、お姉ちゃんが魔神について話し始める。


「まず、魔神ですが悪魔たちが辿り着く頂点というべき存在です。その能力は驚異的の一言になるでしょう。こちら側の世界にいるのは自分の存在を支える素体が必要という問題はありますが、逆に言うとそれ以外の問題はありません」


 その間、僕は自分の手元にある魔銀と呼ばれる魔力を良く通す金属を弄っていく。

 

「基本的にどんな素体を使っても自身の能力が下がることはありませんが、素体のもつ技量も受け継げるために悪魔を含め魔神たちは出来るだけ優秀な素体に目をつけてその体を奪い去ります」

 

 ここにやってくるときにも作った転移魔法。

 実に便利な魔法であるが、これを戦闘にも使おうとする場合、イチイチ詠唱を唱えるのは面倒だ。

 出来れば詠唱をせずに簡単な形で転移魔法を使いたい。

 そのために、僕は手元にある魔銀で遺跡にあったような魔力を通すだけで発動できるような魔道具を作りたいのだ。


「性格に関してはそのどれもが冷淡で邪悪。元より悪意の塊として生まれる彼らは純粋にして絶対なる悪なのです。一切の悪気なくどんな相手にも残酷な行いをするでしょう」


 どんな形の魔道具にするか。

 あまり邪魔にならない形にしたいよね。


「その実力に関してはいうまでもないですが、圧倒的です。ですが、魔神と戦う上で有効に働く武具などもありますので、勝利が不可能というわけではございません」


 良し、ピアスにでもしようかな。銀色だけでも不自然な見た目にならない装飾品ってピアスくらいだよね。

 この世界だと指輪を含めて多くの装飾品は宝石をつけるのが当たり前だし。

 宝石をつけないのなんてピアスくらいなのだ。


「そして、ミューちゃんに目を付けたという魔神は恐らくスピリトでしょう?」


「え、えぇ……そうですが。良くご存知ですね」


「……ま、まぁ、長く辺境の地を守護する者となれば多くの情報も入ってくるんですよ」


「……なるほど。そういうものなんですか」


「すっごいんだな。ロマルス家とは」


「そうなんです。凄いんです、我が家は。ということで話を戻しますが、スピリトが本格的に動き始めるのは最低でも一年もあとでしょう。その一年間の間に多くのことを準備出来るはずですよ。スピリトに勝利するのも夢物語はないでしょう」


 良し、良し……いい感じに魔法陣を描けている。

 小さなピアスの形に魔法陣を押し込むのはかなり難易度が高いが……今のところは良い感じだ。

 僕は確かな手ごたえを感じながら魔道具作りに勤しむのであった。

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