魔法
「ここら辺で良いだろう」
我が領地は王国の端も端にある辺境の地を統べる大貴族である。
他国との国境を接する重要地点ではあるものの、ロムルス家の領地は全貴族の中でも最も広大だ。
その領地の中には険しい森だったり、山だったりがあり、人が住むにはあまりにも過酷な土地もかなり多い。
そんな土地の一つ。
誰もこないような砂漠の一角へと僕はやってきていた。
目的は自分の持つ魔法の試し打ちである。
『誰もいないからってあまり調子に乗りすぎるものでもないぞ?当たり前のような顔をして砂漠を消し飛ばすとかダメだからな?』
「……なんでそんなことを悪魔に言われなきゃいけないんだ?」
『ぐぅ』
半ばテンプレになりつつあるリリスとの会話をこなした後に僕はその後に無理やりリリスの口を奪う。
『『「■■■」』』
そして、魔法の詠唱を開始する。
僕の口が一つにリリスの口を二つを使って。
多重詠唱は実に面白い。
組み合わせ次第ではただの足し算どころか掛け算、累乗にまで跳ね上がることもある一方でマイナスへと振り切ることもある。
「ふひっ」
自分の中で荒れ狂う魔力に暗い夜の砂漠を照らし上げる巨大かつ神々しい魔法陣が僕の周りを踊る。
「……これは、不味いな」
魔法を撃つ前、まだ詠唱を完成させた段階でこれは問題作であると予感する。
『そ、そうだ。これは、これは流石に不味いぞ!?何が起こるかわかったものではない!!!今すぐに魔法の詠唱は中止にすべきだろう!?』
そんな僕の呟きに反応して声を上げられるリリスの焦った声。
「断る!」
それを一蹴に帰した僕は魔法を発動させる。
幾重もの重なりあった詠唱が作り上げたのはすべてを無へと帰す一つのエネルギーであり、指向性が与えられた人知を超えたエネルギー齎したのは───
『あばばばばばばばば』
───それは圧倒的な破壊であった。
「おぉ……」
神の如き所業。
前世の僕がどれほど恋焦がれたかわからない、魔法であり、核兵器すらも超えるような超威力に僕は震え、笑みを漏らす。
素晴らしい……素晴らしい……素晴らしい……これだ、これで間違っていない。魔法を極める───その先にッ!!!
「およよ?」
僕の興奮が最高潮に達していた頃、思いっきり撃った魔法による影響によって大きく上がっていた砂埃がある程度引いたことで、作り上げた大穴が見えてくる。
「なにあれ?」
僕が作り出した巨大な穴。
そこには謎の巨大な遺跡が見えていた。
「行ってみるか」
それを前にした僕は一切迷うことなく穴の中へと突進していくのだった。
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