前世
第三王女、マリーヌ・アハテム。
簡単な自己紹介を終えた後、彼女は早々に退室してもらった。
詳しい話をするには準備不足だろうし、今日のところはもう十分だ。
「あ、あわわ……ね、ネージュに、とうとう……婚約、者がぁ……」
そして、マリーヌが退出した部屋で僕の隣にいるお姉ちゃんが震えていた。
「まだ婚約者になるかどうかはわからないけどね……えっと、確か……悪魔の書籍はどこにあったかなぁー」
そんなお姉ちゃんを軽く受け流した僕は今、手にある魔導書を閉じて悪魔に関する記述があったはずの本を探しに行く。
ちなみに僕が屋敷の中で最も長く滞在している場所は書庫であり、さっきまでも当然のように書庫にいたのだ。
「……悪魔?」
そんな僕の言葉を聞いたお姉ちゃんが険悪な表情を浮かべながら、疑問の声を上げる。
「なんでそんなもの……?悪魔はダメだよ?近づいたりしちゃだめだし、言葉を交わすなんて以ての外だから!興味なんてもっちゃだめ!」
そんなこと言われても既に僕の中には悪魔が住み着いている。ひどく今更であると言わざるを得ないだろう。
「相手は魔神。悪魔に関係があるかもでしょう?」
「……そうは、そうだろうけどぉ」
「……ん」
それは、そうだろうけどぉ……?なんでそんなことをお姉ちゃんが知っているの?魔神の存在なんて神話系統の書籍でちらりと見ただけの存在でしかないし、悪魔と関係あるなんてそれこそ悪魔であるリリスからの情報じゃなきゃ……とか思っていたのだけど。
もしかして、僕が知らないだけで実は魔神の存在は案外ポピュラーだったりするのだろうか?
「あった」
お姉ちゃんの言葉に対する違和感を覚えながらも僕はお目当ての本を見つけて本棚から取る。
「一応中身は大体覚えているけど、完全に覚えているわけじゃないからねぇー、なんかあるかも」
僕が手に取った本は悪魔についてひどく詳細に書かれた一つの書籍である。
「……って、うん?」
本棚から本を取り出すと共に地面へと落ちた一枚の紙きれを僕は拾い上げる。
「あっ、待って!?そ、それはあまり見なくて良いから……ッ!」
白い紙を拾い上げる僕に対してお姉ちゃんが焦ったような声を上げる。
「……日本語?」
だがしかし、僕はそんなお姉ちゃんの方に意識を割くことは出来ず、ただただ驚くことしか出来ない。
何故なら、その白い紙に書かれていたのは実に久しぶりに見る日本語であったからだ。
「……字きったな」
書かれている文字は書き順もバラバラでただひたすらに読みにくい汚い文字ではあったが、それでも確かに日本語でない。
僕は字がきれいな方なので、
それでは、これは一体誰の字なのだろうか……?
「……日本、えっ……?あぇ?」
そんなもの、僕の後ろで明らかにおかしな態度を見せているお姉ちゃんの他いないだろう。
「……お姉ちゃん?」
「……ネージュ?」
互いに疑念を持った視線と視線がぶつかり合う。
「もしかして、僕と同じ転生者だったりする?」
そして、僕はお姉ちゃんに向けて率直な疑問をぶつけるのだった。
新作です!読んでぇー
『悪役貴族として転生したけど、ゲームの推しとラブコメしたい!~ただモテたいがために心を入れ替えて努力していただけなのに何故か周りか聖人君主として崇められるようになったのですが~』
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