返答
「いっちょあがりだな!」
火球を受けて気絶して倒れている女騎士を前に僕は独り言を漏らす。
『……思ったよりも容赦なかったな』
それに対してリリスが若干引いているような声を上げる。
「いや、別に死なないくらいに手加減したし、良いでしょ」
そんなリリスの言葉に僕は彼女にしか聞こえないよう魔法で工夫した声で返答する。これでもしっかりと手加減をして死なないように魔法をぶっ放した。
ゆえに、文句を言われるいわれはないよね。
「「「……」」」
僕が誰の目から見ても圧勝と言える結果を残したことに父上も含めた周りの大人たちが全員驚愕して固まる。
「こ、こんなに強かったんだ……」
だが、そんな中でいの一番に動き出したのは第三王女であった。
「す、すまない!……わ、私は君のことを勘違いしていたみたいだ……君に、酷いことを言ってしまった。本当にすまない」
慌てて僕の元へと駆け寄ってきた第三王女は視線をあっちこっちに移動させながら、慌てた様子で言葉を続ける。
「それでも……よ、良ければ……わ、私と婚約してほしい!」
だが、そんな第三王女の横を通り抜けた僕は父上の前へと立つ。
「父上、今回の婚約話はなかったことにしていただきたく思います」
そして、彼女本人に告げる形ではなく、父上へと告げる形で婚約の話を否定する。
「な、なんでだ!?」
それに対して父上が答えるよりも前に後ろにいる第三王女が声を上げる。
「普通に考えて婚約話だというのにいきなりこんな雑魚と結婚したくないと言い放ち、そのままこんなところにまで連れてこさせた相手と婚約したいと思う人がいるわけないでしょう。当然、自分も嫌です」
「ぐぬぅ!?」
第三王女も別に馬鹿ではないだろう、自分の態度が不味かったことくらい認識しているだろう。
『なんか訳ありみたいだし、少し話を聞いてやるくらいしてやればいいのに。何か焦っている様子だったぞ?多分だが、その裏にはそれ相応の理由があるぞ?』
「別に興味ないし」
リリスの言っていることは事実だろう。
何故かは知らないが、第三王女は何処か焦っているような雰囲気を感じる。
だが、だからと言って別に僕の興味がそそられるわけではない。面倒ごとはスルーでお願いしたい。
「う、うぅ……」
第三王女は二の句が告げられなくなり、口をもにょもにょさせながらこちらへと視線を送り続けている。
「それで父上。今回の婚約話のに関する是非に対しては自分の意思も考慮してくれるのでしょう?であるならば、初対面でいきなり宣戦布告してくるような失礼ではなく、普通の良識ある人が良いです」
「う、うむ……」
父上はちらりと自身の隣にいる国王陛下に視線を送りながらも僕の言葉に頷く。
「申し訳ありませんが、此度の婚約話は息子の意思も読み取って辞退させていただきたい所存にございます」
そして、父上は国王陛下に対して断りの言葉を真正面から告げてくれる。
「うむ」
そんな父上の言葉に国王陛下に頷く。
「父上!」
それに対して不満の声を上げるのはやはり第三王女である。
「……今日のところは戻ろう。いつまでも邪魔しているわけにはいかないからな。私たちもまだここには滞在するからな」
それを嗜める国王陛下は優し気な声色で第三王女へと告げる……どう考えても諦めていなくない?これ。
『やらかしたな。力を誇示しすぎて完全に目をつけられたな!』
「……多分だけど、ここに来て我が家との婚姻にこだわるのって多分外敵がいるってことだよね?明確な一国家として。それを滅ぼしたら……頼めるかな?リリス」
『何を頼もうとしているの?』
僕のお願いに対してリリスが大真面目な声色で返答する……こいつは本当に周辺諸国の多くを滅ぼした悪魔なのか?良識ありすぎない?
僕はそんなことを考えながら我が家を後にする国王陛下一行を見送るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます