模擬戦
女騎士を前にする僕はどう戦うかを悩む。
別に勝ってもいいし、負けてもいい……ロムルス家としての教育はただ一度の敗北も認めないというものである。
ゆえにこんな模擬戦でも負けていいわずがないだろう。
だが、普通に考えていくらロムルス家と言えども未だ簡単な教育しか受けていない餓鬼に現役の騎士に勝利しろなどという無茶ぶりは課さないだろう。
ということで僕はこの模擬戦をどう決着させてもいいのだが、
「……ふっ」
いや、せっかくの模擬戦なのだ。最大限楽しませてもらうとしよう。
「■■■」
僕は己の口で詠唱を開始。
詠唱の言葉をぎゅっと短縮した自己流の言葉を使って詠唱を唱える僕は一瞬ですべてを唱え終わる。
「傀儡人形」
悪魔であるリリスを見ることで魂を知った。
そして、一番身近である感じることで人の魂の輪郭を理解した。
「……ッ!?」
次に僕が目指すのは人の魂を見ることである。
それを目的とする僕が発動させたのは人の精神に干渉し、掌握するかなり高難易度な上級魔法である。
「うご、かない……ッ!」
それを受けて、精神を僕に掌握された女騎士は何もすることが出来ない。
何故なら、今彼女の体へと命令を下す脳並びに精神を掌握しているのは僕なのだから。
「……」
完全に握った女騎士の精神をにぎにぎしながら色々と解析を進めていく。
リリスは魂という言葉を使っていたが、意味としては精神と同じっぽそう。
そして、精神と脳はイコールで結べると思っていたが、全然違いそうだ。脳を含めた肉体の中に、そうだな。精神体とでも呼ぼうか。透明でいつ霧散して消えてもおかしくない霊体のようなものが存在する。
これが、ほとんど魔力で構成されているこいつが精神であり、魂なのだろう……ってことはだ。魔力を見ればその人の精神体が図れるわけで……うん、ちゃんと見れるようになりそうかも。
それで、だ。リリスたち悪魔はこの肉体と精神体への移譲が自由自在であり、ほとんどが魔力である精神体の状態となれば簡単に人間の身に入れるのだろう。相手に魔力を乗っ取る形で。
では、では……だ───あの人はどうだっただろうか?
「ガァァァァァァアアアアアアアアアア」
僕が考え事をしている間にも女騎士は囚われ続け、何とか脱しようとありとあらゆる手を尽くしていた。
「っとと、忘れていた」
そんな彼女の藻掻く声を聞いてようやく意識をそちらの方へと傾ける。
『……あんなに頑張っているんだから忘れないであげてよ』
「しょうがないじゃん。良い感じに魂の存在をにぎにぎして遊んでいたんだから」
僕はリリスの言葉に言葉を返しながら両手を叩いて、女騎士の体を縛っていたものを解除する。
「わわっ!?……ッ!」
いきなり自分を縛っているものから解放された女騎士は動揺しつつも、再び縛られることを恐れて早々に戦いを終わらせるべく地面を蹴って、僕との距離をいきなり詰めてくる。
「よっと!」
だが、あまりにも焦りすぎである。
まともに態勢も定まっていない状態で突進してこられても、隙を晒しているだけでしかない。
「がふっ!?」
実に隙だらけの様子を見せる女騎士の髪を掴んだ僕はそのまま彼女を持ち上げて腹に膝蹴りを一つ。
そして、軽く上へと飛んだ彼女への追撃としてお見舞いした回し蹴りで今度は横に吹き飛ばす。
「■─火球」
最後に魔力を込めて丹念に練り上げて作り上げた火球魔法を叩き込んでいっちょ上がりである。
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