四歳
僕が転生してから多分四年くらいは経ったと思う。
既に言葉も理解し、体を自由に動かせることが出来るようになった僕は赤ん坊だった頃はただ魔力を体内の中で回したり、伸ばしたり、編み込んだりすることしか出来なかったが、今ではもう魔力を用いて様々なことが出来るようになっている。
魔力は本当に凄い。
未だに魔法っぽい奇跡は起こせていないが、それでも軽く人間を超えたパワーを出せることが出来る。
前世の段階でも僕は木を引っこ抜いて振り回したり、クマとステゴロで戦って勝利したり、結構な化け物レベルであったが、魔力があればそんな身体能力も軽く超越出来る。
家より高く飛ぶことも容易だし、車並みの速度で走れるし、手刀で地面を割れる。
今の僕ならば秋田で大活躍できそうである。
「……」
そんな僕はいつものように自分の部屋で座禅を組み、体内にある魔力を操作し、その量を増やす作業を行っていた。
ちなみに魔力は体内で使えばその量を増やすことが出来る。他にも色々と魔力を増やせる方法は見つけているので、僕の体内にある魔力量は順調に増えている。
「ねぇーじゅぅー」
そんな最中であった。
「……ッ!?」
いつの間にか半開きになっていた部屋の扉が
そこにいるのは赤ん坊の頃に僕のトイレ係を任せていたド変態……僕の予想通りに己の姉であった少女、スキアである。
「ふ、ふへへへ、ネージュ」
僕より五歳年上で現在九歳のスキアは昔と変わらぬ変態性を僕に見せながら口を開く……喋りながら涎を垂らすの本当にやめて欲しい。なんでそんなに涎を垂らしているのだろうか?
「……何?」
「本、読みたくない……?」
僕の言葉に対してスキアはおずおずと一冊の本を取り出して見せてきながら僕に尋ねてくる。
「魔法の、本が私の手元にあるんだけど、一緒に読んでみたくない?魔法、って凄いんだよ?手から火が出てきたり水が出て来たり……興味ない」
「読む。お姉ちゃん大好き」
スキアの言葉を聞いた僕は即答する。
「おんほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
なんたる……なんたることだ!?魔法の本だと!?
そんな素晴らしいものが……あるのは当然だろうけど、それを読ませてもらえるのか!まだ五歳だからって何も出来ずにただ部屋の中で安静にしているよう両親から強制されている僕に、読ませてくれるのか!
ごめんよ、これまでスキアのことをずっとド変態で将来、魔法の研究を邪魔してきそうなんて思っていて、君は最高だよ!
「大、好きィィィィィィィィィアッ!?おね、お姉ちゃんッ!?ァァァァアアアアアアアアアア!?ぐへへへへへ、お姉ちゃん呼び、ですかァァァァ!?そ、それは何ともぜい、たくなぁぁぁ!?」
魔法、魔法、魔法だ!
これまで長らく、前世の時より、あの日より追い求めていた魔法が今、僕の目の前にあるのだ。
それを前にして昂らない人間などいないだろう。
「魔法の本、頂戴」
「あっ、ダメ、だよ?お姉ちゃんと一緒に読まない、と……流石に一人で読ませるわけには、いかないから。お姉ちゃんの部屋に、行くよ?」
「……わかった、行く」
何かスキアの部屋に行くのは凄い抵抗感があるが、それでも魔法の本を前にすれば諦めるしかない。
「……行こ、早く、読みたい」
組んでいた座禅を辞めて立ち上がり、スキアの待っている扉の方へと向かっていく。
「ほい、来た!」
扉の前にまで来た僕をスキアは軽々と持ち上げる。
「さぁ!行くよ、ふへへ」
「……うん」
スキアに持ち上げられた僕は、だがしかし、抜けだすのも面倒だった僕は、そのまま彼女の人形であるかのような形で大人しくスキアに持ち運ばれるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます