第一章 幼年期
転生
思わず少女を助けてしまい、死んでしまった───それにしても最後の最後。死ぬ直前に何か大切なものを見たような気がしたのだが……あれは何だったのだろうか?
いや、そんなことより重要なのはとうとう僕は魔力を見つけることが出来たということだ。実に分かりやすい形で自分の周りに光として浮かび上がっている。
え?死んだはずなのに魔力を見つけることが出来たのは何故かって?それは僕が転生したからである。なんでこうなったのかは理解出来ないけれども、魔力を見つけたという事実を前にすれば何もかもが霞むよね。
とりあえず今の僕の状態としては生後数か月のベイビー。まだ何も出来ないような状態である。両親らしき人物が喋っている言葉も全然日本語ではないので言葉からの情報が得られないのは痛い。解読できそうな気もするが、そもそも絶望的に単語力がないのでどうしようもない。なんとなくの文法は理解できるのだが、
というわけで、いまのところわかるのは文明レベルが中世くらいかなぁーっていう程度である。
ちなみにメイドさんらしき人たちもいるので僕はそこそこの立場にありそうな人の子供として生まれている。
『……んっ』
両親が金持ちというのは素晴らしい。
結局のところ、僕がこの世界にある魔力を用いて魔法を極めようにも
『……はぁ、はぁ、はぁ。私の弟ぉ。弟だよぉ……』
一つだけ問題があるとすれば僕が寝ているベッドにへばりついている幼女である。両足をもじもじとさせながら息を荒らげて、頬を赤らめているこの子だ。
すっごく邪な雰囲気を感じる。
まだ五歳くらいの少女が醸し出していて雰囲気ではない……これは、僕と同じ転生者ということだろうか?
「……」
前世の僕と同じ白い髪に、白に近い水色の瞳を持った可愛らしい子であり、目元と口元にある泣きぼくろに艶ぼくろがチャームポイントだ。
中々に見た目レベルは高いけど、それでも変態オーラを出すこの子……なんとなく両親と思われる人との会話からこの子が僕の姉である可能性があるんだよなぁ。
この変態っぽそうな幼女が僕の姉とか嫌だなぁ……付きまとってきそうな雰囲気がある。前世にいた幼馴染の女の子を思い出す。
『うみみ……めにゅ、可愛いなぁ、可愛い。これが弟。ふへへ、私の弟ぉ……やっぱり、ネージュ様の顔面レベルは最強だよぉ。私的には傲慢ちきなネージュ様も可愛いけど、やっぱり家族になったのだから、ちゃんと、導いてあげないとぉ。やっぱり推しには長生きしていて欲しいし』
最低限、僕の魔法研究の邪魔をしなければ良いのだけど……おっと。ヤバい、うんちに行きたい。
至極当然の生理現象が来てしまった。
普通の赤ちゃんであればここで垂れ流した後に泣くことしか出来ないかもしれないが、前世の記憶を持つ天才児たる僕であればもっと完璧にうんちを遂行出来る。
僕の持つアドバンデージ、それは自分の近くに何でもこなしてくれる奴がいるということだ。
「おんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ」
この変態にも有効活用出来ることがある。
僕が泣き声をあげながら自分のベッドの隣にある桶の方へと手をやる。
『んっ……?あぁ、トイレかな?や、やっぱりこの子ありえないほど賢いよね……?赤ちゃんってこんなに意思表示できるの?た、頼まれたやるしかないけどぉ』
僕の意思によって動く変態としか思えない女が僕を持ち上げて普段トイレとして利用している桶の方に移動させてくれる。
「……んなぁ」
その段階になって僕は初めてうんちをする
たとえ、赤ちゃんになったとしてもうんちはトイレでするものなのである。
『う、うんちだぁ……弟の、うんちぃ。あの、ネージュ様のぉ……食べちゃいたい……うぅん。でも、ダメェ……そんなの、汚い。私が弟を汚すわけにもいかないからね……あぁ、ちゃんと、ちゃんと綺麗にしないと』
ウンチの処理をしてくれるのはありがたいけど、それでも処理をしながら何かをずっとぶつぶつ言いながらにやけているのは本当に辞めて欲しい。
そんなことを考えながら僕は変態に身を任せてうんちの処理をさせるのだった。
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