第16話 門と門番
「おおっと、やっと発見。ゲートだ。」
レベッカが叫ぶ。
「シーッ。ったく何考えてんのよ。こんなところで叫んだらドールが目覚めるじゃない。」
それにノアが注意する。
ここは48層。切り立った乾いた崖だらけの階層の、とある山肌に開いた洞窟。その最奥。
ダイヤモンド・ダストの二人が大熊を倒したその後。
なんだかんだと階層をさまよい、やっと見つけた出口である。
階層をつなぐゲートの場所は様々で、入ったゲートからすぐ見える場合もあれば、こんな風に、でっかい山々のその山肌に開いた小さな洞窟を進み入ったところでないと発見できない、そういうものだってある。
基本的に、ゲートいうのは一方通行。
門があって、そこには
門番、なんて言っているが、実際は
で、階層を渡った出口にはこんな門やら守護兵はおらず、出口付近はなぜか安全地帯にはなっているが、そこから戻ることはできない。
1つまたは場所によっては複数ある門。そこを目指さねば一度入った階層からは出られない。だからこそ生きて帰ってきた階層が意味を持つ。
ちなみにこの門番、浅い階層では本当に小さな動きも遅い木の人形だったりする。木剣どころか単なる木の棒を持って立っている。
5階層まではだいたいこいつで、畑仕事を手伝えるような子供ならば、十分勝てる。
で、一度こいつに勝つと、次からは無条件で門を通り抜けられる。
小さい子供が、他の階層にお使いやら遊びやらに行くための、初めての試練に用いられたりするので、人の住む階層では、誕生日等のイベントに使われる場合も多い。
が、そんな人形も、階を重ねると、巨大化し、素材が変わり、徐々に強くなる。また、魔法を使うなどの特殊攻撃を行ってくるものもいたり、と、多種多様である。
我らがダイヤモンド・ダストも、このダンジョンのこの階層ははじめてであり、門番を倒すしか、進む道はない。
ちなみに、目の前の門番は2体。
いずれも、硬そうな金属でできているようで、目のところには魔石だろうか、1体が赤と緑、もう1体が青と黄のオッドアイである。
「アンダマイトっぽい?」
「目の色は魔法の種類だろうね。」
二人は、それらを視て、言う。
はるかに彼女たちより大きい。さきほどの熊と同じくらいか。
手には槍を持ち、いまのところは彫像のように動かない。
「行くしかないよね。」
二人は互いに顔を見て頷き、レベッカは取り出したハンマーを両手に携え、走り出す。
それに
「クイック、ストロング、ガード、タフネス!」
ノアが後ろから補助魔法を叩き込む。
「やぁーーー!」
キラン、と目が輝き、ゆっくりと動き出す門番に、動く前にと、レベッカが飛び上がった。
上方から、振り上げたハンマーを打ち下ろしつつ
「インパクト・ウェーブ!!」
インパクトの瞬間、魔力を接地面に流し込んだ。
グォォォォォン・・・・
空洞の鐘を叩いたような音が、質量を持って鳴り響く。
が、その門番はなんとかこけずに踏ん張った。
そうこうしているうちに、もう1体、青と黄の目を持つ奴がレベッカを土に串刺しにしようと、大きな槍を振り下ろした。
「サンクチュアリ。」
が、それはレベッカには届かず、ノアの結界に止められる。
反対に、振り返りざま、門番の腿へとレベッカはハンマーを打ち上げた。
ノアの結界はその動線を邪魔することなく、あうんの呼吸でサンクチュアリを消している。
ガゴーン・・・
先ほどよりは詰まったような音。
元々、バランスを崩しかけていた門番は、その打撃で多々良を踏み、辛うじてバランスを取っていた、もう一体にレベッカを挟んだ状態で倒れ込む。
「サクション。」
が、そんなレベッカの身体は、ノアの魔法に吸い寄せられる。
ガラガラガッシャーン。
そして、2体の門番は積み重なるように崩れ落ちた。
「どうだ?」
「まだよ。サンクチュアリ!」
振り返るレベッカに、ノアが叫ぶ。
下の門番の目が光り、魔法を撃ちだしてきたのだ。
赤と緑。色の通り、炎と風。
火の光線に風を巻き付け、威力を増しながら、彼女たちを襲った。
キーン
結界に触れると、なめるように火が広がる。
どうやら、ノアの結界が十分に役に立つようだ。
と、同時に石つぶてと水の球が結界を打ち付ける。
もう一体も無事で、目から光線を出してきたようだ。
ダダダダ・・・・
バューーーン・・・
しばしの反撃。
が、数分、いや実は数秒か。
順番にプシュー、という音と共に、目から光線が消えてしまった。
ガシャン。
と同時に、積み木が崩れるように、門番がブロック状に崩れてしまう。
シューーーン
それを合図にか、門番の向こう、門扉が開く。
「終わったみたいだな。」
「ええ、行きましょう。」
二人はにっこりと微笑み、崩れた金属のブロックを回収すると、門の中へと入っていった。
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