第37話 ポストシーズンカード
ペナントレースが終了し、パンサーズが所属するグランドリーグは、1位が
一方、ニッポンシリーズで対戦するオーシャンリーグは、1位が大阪バイソンズ、2位が福岡ファルコンズ、3位は北海道バスターズとなった。それぞれ2位と3位のチームが対戦し、勝ったチームが1位のチームと雌雄を決するという方式であった。
ギガンテスとスパローズが、ギガンテスの本拠地、新東京ドームスタジアムで対戦している間、日向たちパンサーズは、
日向は、祝勝会の夜、体調を崩したが、すぐに回復し、練習に出てきていた。練習では、いつもどおり何本もライナー性の打球をスタンドに打ち込んでいたが、何本か、フェンスの前で失速する打球があり、気になっていた。
日向は、ベンチに戻って練習を眺めながら、祝勝会の夜の飛鳥のことを思い出していた。飛鳥が自分を好いていることは、正直うれしかった。それと同時に、彼女にキスされたときに感じた感覚は何だったのか考えていた。あの時、彼女が言った言葉、唇の感触、何もかもが過去に経験したもののように思った。そんなことを思っていると、榎田がやってきた。
「おっさん。何|黄昏れてんのや。彼女のことでも考えてんのでっか。」
「おお榎田か。よくわかったな。」
「なんであっさり認めんねん。いじりがいないなぁ。ハハハ。」
日向は、飛鳥のこと以外にもう一つ気になることがあったので、榎田に聞いてみた。
「ところで、ポストシーズンカードっていうのは、どういう日程になっているんだ。」
「なんや、そんなことも知らんのでっか。今やってるギガテスとスパローズの試合で勝った方とやるセカンドステージ第一戦は、10月11日、うちに1勝分付いとるから、連勝すれば、12日には優勝が決まるで。まっ、最悪の場合は、14日の最終戦に決まるけど、そうなりたくないな。きっとギガンテスが出てくると思うから、ギガンテス戦に強いおっさん、きばってや、たのんまっせ。」
「そうか。14日が最終戦か。」
と言うと、雲一つない空を見上げた。秋空は爽やかだったが、日向の心は、穏やかではなかった。
「10月か。再びあの日がやってくる。79年前、俺が乗った船が沈んだあの日。記憶が止まったあの日。おれは、その日を迎えたらどうなるんだろう。」
そう思いながら、不安そうな面持ちでいると、再び榎田が、
「なんや、大丈夫でっか。ぼーっとして。たのんまっせ。。」
「おお、すまんすまん。一発かましてやるから、まかせとけ。」
日向が笑顔で返すと、二人のやりとりを見ていた若手の選手や記者が集まってきた。
榎田の予想どおり、ギガンテスがスパローズを下し、セカンドステージに駒を進め、永遠のライバル、ギガンテスとの対決になった。
ポストシーズンカードのセカンドステージは、シーズン上位チームであるパンサーズの本拠地、辛酉園球場で行われることになっていた。先に3勝した方が、ニッポンシリーズに進めることになっていたので、上位チームが有利になるよう1勝分がパンサーズに付与されていた。
先勝して、ニッポンシリーズ進出に王手をかけたいパンサーズだったが、スパローズに勝って勢いに乗るギガンテスの前に、0対7と大敗してしまった。先発で出場した日向も、4打数ノーヒットと振るわず、二度も併殺打を献上してしまい、大ブレーキとなってしまった。大きな当たりもあったが、ファウルになったり、完璧に捉えたと思った打球が、フェンス前で失速したりした。この結果に日向は、石坂の話していた老化のことを思い出していた。
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