第9話 プロローグ9
カリスーラ暦758年10月15日
フォイジャー亭 3階306号室
(それにしてもなんでダンジョン付近ではではあの流行病の進行が遅くなるんだ?)
ダンジョンの特性とは人ならざる力が働き、地上とはまた違う原理で世界が動いているといことだ。
それぞれのダンジョンではそれぞれのテーマがあると言われおり、ダンジョンごとに求められる事が違う。例えば近くのカンテラのダンジョンでは持続と進歩がテーマである。
カンテラのダンジョンはその特性により環境や魔物が大きく変化する。特に下層に到達しようと思ったら様々な環境に同時に適応しながら変化を続ける魔物を屠らなければならい。
他にも有名な7つの試練に数えられるダンジョンではそれぞれ、知恵、勇気、節制、正義、信仰、希望、愛が求められる。
少し話が逸れた。話を戻そう。他にもダンジョンには大きな特性がある。それはダンジョン内で魔物を倒したとしても全て魔石に変化してしまうということだ。
何故こうなってしまうのかハッキリとした原因は不明だ。聞いた話では空気中に漂う魔素を固めたとか、神の創造物なのだから原理など分からんとか、別世界に通じているのだからその世界軸においてはそうなるのが自然のことなのだとい言う人たちもいる。
自分的には1番最初の説が最も有力な説だと思う。ダンジョンに実際入ってみると分かるが明らかに地上と比べて空気中に漂う魔素の量が多い。まるで地上にいくつか存在する聖域並みの多さだ。
魔素の量が多いと身体が活性化し、地上に比べて身体能力や感覚が高くなったり、鋭敏なったりする。
その聖域並みの多さを誇る魔素がダンジョンに存在していることでダンジョン内の魔物や植物もまたより強化されたり、成長速度が早かったりと影響が出る。
そんなダンジョンのため、通常ハンター以外は危険なので入らないし入れない。
そう、しかし今はそれが問題なのだ。ハンター以外が入れないということはダンジョンが流行病に効くかもしれないとしてもハンター以外には全く病気の対抗手段がないということになるからだ。それでは多くの一般人は死を待つばかりになってしまう。何が原因かを早くを早く突き止めなければならない。
俺は頭を悩めせて考えていたが、考えすぎたのかいつのまにか机に突っ伏して眠り込んでいた。
カリスーラ暦758年10月20日
ダンジョンに関する何かが病気に効くという情報を耳にした俺は翌日、一旦家に戻るのを止め、ギルドやギルドから商品を卸している店に行き、ダンジョン産の薬草やその他の薬の材料をたんまり買い込んだ。そしてその日から数日間宿屋に引きこもって俺は新たな特効薬の開発に勤しんだ。
まずは片っ端からから従来の薬をダンジョン産の物のみで作り、従来の薬との成分の比較から始めた。すると立てていた仮説と同様の結果が出てきた。どの薬もダンジョン産の材料のみで作った薬は従来の薬と比べて魔素の含有量が約2倍ほど違うことが判明したのだ。俺は早速この薬をフィアルの薬師ギルドに提出し、調剤の配合レシピを感染地域へと送ってもらった。結果がわかるのは約2週間後らしい。俺はその間も自分の立てた仮説が正しいことを証明するためにより効果があるであろう薬の開発に精を出した。
カリスーラ暦758年11月3日
試薬した薬を感染地域に送ってから早2週間。更なる効果があるであろう薬を開発していると薬師ギルドの職員が訪問してきた。
「失礼、薬師ギルドの者だがこちらにミカエル殿が宿泊していると聞いたがこちらの部屋であっているだろうか?」
「ええ、こちらで大丈夫です。」
「それは良かった。私薬師ギルドの職員でアルハンドラと申します。さきに提出された試薬の効果についての報告に伺いました。」
彼はそう名前を名乗りながらギルド証を提示した。
「お待ちしていました。申し訳ありませんが時間がありません、早速本題に入っていだだけますか?」
「かしこまりました。ではまず試薬の効果から報告します。ミカエル殿が提出された試薬5746番は若干の効果が認められました。特に初期の感染患者に対して特に効果が認められ、数日間の症状の遅滞が確認されました。ですが、それ以降の患者には軽い痛み止めの様な効果しか発揮せず、症状からの回復を見込めるものではないことが確認されました。」
「ありがとうございます。どの成分が有用だったか分かりますか?」
「はい、試薬5746番は所謂普通の風邪薬ですので何かしらの成分が特に有用であったとは言えませんが、通常の風邪薬に比べ魔素の量が約2倍近くあったことから魔素が大きく関係しているとことは間違いないと薬師ギルドは推察しております。」
「やはりそうでしたか…。薬師ギルドはすでに何かしらの手を打っているのでしょうか?」
「いえ、まだ有効的な手は打てていません。ただミカエル殿の薬を患者に投与し、少しでも時間を稼ぐのが最善かとギルド上層部は思索している様でした。」
「ありがとうございます。だいたい聞きたいことは聞けました。それとついでで悪いのですがこの新しい薬のレシピも感染地域に送ってもらって効果を確かめられないでしょうか?」
「ええ、大丈夫です。…それにしてももうすでに3つも新しい薬を開発されたのですか?」
「いや、正確には1つだけです。これらは含んでる魔素の量がそれぞれ違うんです。1つ目は試薬5746番?だっけ、それの2倍、2つ目は5倍、そして3つ目は人が1日に摂取しても大丈夫な量の限界ギリギリまで含有しています。」
「なるほど、しかしどのようにこんなにも魔素を薬に混ぜることができたのですか?」
「材料は簡単でした。ただ逆転の発想が必要だっただけですね。」
「…なるほど、魔石ですか。確かにこれは盲点でした。これならどこでもすぐに作れそうですね!」
「はい、ただ魔素の配分には特に気をつけなければならので必ず10、9、8等級の魔石を使ってください。魔素は過剰に摂取すればただの猛毒です。薬を撃退するのに必要な量だけを処方するようにお願いします。」
「分かりました。では急ぎこちらを届けに戻ります。ミカエル殿本当にありがとうございます。」
「いえ、薬師として当然の役目を果たしただけですので。では私も明日には村に戻ります。連絡はエスタのギルドにお願いします。」
「はい!…いえ、ちょっと待ってください、今エスタの街と言いましたが間違いないですか⁉︎」
「え、ええ。そう言いましたけど。」
「悪いことは言いません、今帰るのは少し待った方が良いかと思います。」
「それはどういう…⁉︎まさか、もうすぐそこまで感染地域が拡大しているのですか⁉︎」
「ええ、拡大スピードが想定以上に早く、現在はもうエスタの街の付近まで広がっていると報告がギルドに入りまして…」
「アルハンドラさん…すいません、すぐにここを発ちます。薬のレシピをお願いします!」
俺は居ても立っても居られなくなりすぐに出立の準備を始める。
「ミカエル殿!今から行ってももう間に合いません!ここからエスタまでどんなに早くても1週間はかかるんです、あなたにもわかっているでしょう?それなら…」
「アルハンドラさん、あそこにはまだ家族が戦っているんです。それを置いて自分だけここで安全に薬を作ることなんて僕には出来ない!…すいません、頭では行かない方が良いことは分かっているんです。ここで薬を作る方がよっぽど世の中の人達の為になるって。でも、やっぱり心はそう納得してくれないんです…」
「ミカエル殿…。すいません。あの地が生まれ故郷とは知らず勝手なことを言ってしまいました。許して下さい。」
アルハンドラさんは頭を下げて謝罪してきた。
「頭をあげて下さい。アルハンドラさんは悪くありません。むしろ心配していただいてありがとございます。…では急ぎますので。」
俺はそう言い残して宿を出て、シャルナンの町へ駆けていった。
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