第46話 喰
ユニークスキル、『死者の魂』。発動条件は装備中の武器破壊と同時の死亡。俺にそんな状況はほぼ来ないだろう、と思っていた。そもそも壊れるような物を装備していない上に、何かダメージを喰らった瞬間死ぬわけだから例え装備していても珍しすぎるシチュエーションだ。
……だが! そんな珍しいシチュとやらが今俺に起きているッ!!
スキル発動のウィンドウが表示され、2つになっていた身体はラーメンの油の如くキモチワルく合体! 折れた刀も同様! 『死者の魂』によって完☆全☆復☆活を果たしたのだッ!!
飛びかけた意識がハッキリとしてきた……。
タマグライは硬直している。大技後のフリーズはあるあるだよな、流石に。
急いで『死者の魂』のクールタイムを確認すると、あと10分。内容的に狙って連発させることができないだろうから短めに設定されているのだろう。
まぁここから10分は流石に保たん。どうにかしてあの『
「ハッハッハ、どうだ? 俺はしっかり生きてるぜ?」
うん、死んだけどブラフブラフ。
「……お前」
「で、その今まで2人しか耐えられなかった技を喰らった感想だけど……まぁ口ほどにもねェなァ。今までの連撃のがまだキツかったぜ」
んなわけねぇだろ、死ぬわ。
「わかったらサッサと降参しな! もうお前にやれることはねぇんだよ、この寄生野郎!」
「カカッ……やれることはない、ねェ……」
そう言うと巨大な太刀はただの刀に戻り鞘に納ま……らない! いやまた構え取ってる!?
「お、おい悪あがきは良くないぜ……」
「ククク、俺様は負けず嫌いだからよォ、お前が死ぬまでやらせてもらうぜッ!!」
「えっ」
再び横から迫る太刀。『居合』のカウンターは不可能、当たられば即死。だがまだ通常の回避がある! これで避けれるはずだ!!
「そいっ!!」
タイミング良く転がることで身体をすり抜ける。フハハハこれで一安心……さぁ反撃を――
と思ったが、なんということだ。刃が帰ってきてるじゃねぇか! しかもさっきより速くね!?
「あぁい!」
ジャンプして避ける、だが再び飛んできた! おい硬直どこ行きやがった!
全力で避ける! 避ける! 避ける! 何度も飛んでくるその攻撃はまさに恐怖! いつからこのゲームはホラゲーだったんだッ!?
「あぁー! なんか出ろ、なんか出ろーー!!」
浮かんだスキルの名前を色々叫び、アイテムやらエフェクトをまき散らしながら避ける。はたから見れば手品師と言うより道化師だな、こりゃ。
まぁ見た目なんか気にしてられん。とにかく生き残れ!
「ぽっぽー! ぽっぽー!」
色々出てきた"なんか"のひとつ、ハトだ。クソが、この緊張感のカケラもねェ鳴き声と見た目がムカツクやつだ。さっさとくたば――
「グェッ!」
あ、くたばった……。あれ少し可哀相に思えてきた……。
えぇい、そんな心配してる暇があったら回避に思考を回せ! 飛んでくる刃を――? あれ飛んでこない?
見ると再びタマグライは硬直、なーるほど。
なんかを殺す度に硬直が入るってことね。
ならハトをひたっすらに出してやれば無敵なんじゃね?
ハトの量産を開始しようとすると、
「『魂絶【魔】』」
突然刀が飛び出した! もちろん回避! そして、
地面に突き刺さった刀は紫の光を放った。
なーんかありそうだが、いいから量産!
「『ハト』!」
するとシルクハットから出かかったハトに、紫の手が襲いかかる! あーん、グロテスクな姿に!
イグニスみたいなスキル封じを疑った俺はすぐにトランプ、コイン、水鉄砲を打つがハトと同じように紫の手。
あーあ、大ピンチ。
「カカッ! そんな姑息な手はいらないぜ? 正々堂々戦おうや」
うるせー! 正々堂々勝てるわけあるかーーッ!!
文句垂れる前に再び太刀! 太刀! 太刀!
全部ギリギリ過ぎて精神擦り減るわ!
「俺様もそろそろ疲れてきたぜ。さっさとお前の魂喰わせなァッ!!」
「んなもん喰われて溜まるかよォーッ! 逆に俺が喰ってやるわバーーカッ!!」
ちょうど少し太刀が止まったところに飛びかかる。そして俺が取った行動は……!
「一応ここはゲームだ。消化とか気にしなくていいよなァ!?」
ガブッ! とタマグライに噛みついた!!
そのままバキッ! と音を立てて真ん中らへんが砕ける!!
「おまっ、何やって……!?」
「文字通り、"喰った"!! テメェの専売特許だと思うなよォォォッ!?」
「頭おかしいんじゃねェか!?」
「経験値と身体パクる寄生虫に言われたかないねッ!! このまま全部――
あれ……? なんか視界が変……。
それに身体が……クソ熱い!!
やっべぇ、死ぬわこれ。
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