第45話 『魂絶』

「はいっ! そいっ! 『居合』ッ! ていッッッ!!」


 次々と飛んでくる刀を回避と『居合』で全て受け流す。今更だけど、回避すると身体すり抜けてくのなんか面白い。

 全部避けきって一安心……なんてできないね!

 すぐに超高速スラッシュが飛んでくる! はいはい居合居合!

 そして『飛燕』で空中から斬撃、再びタマグライをへし折る。だが即再生。おいこれどうやって倒すんだ!?


「カカッ、こいつはどうかな?」


 タマグライが邪悪な光を放つと、地面から甲冑侍が現れた! 元々「血塗られた戦跡」で出現するのはタマグライのペットかよ!

 状況は6対1、絶望的。四方八方から来る斬撃をなんとか躱しながら俺はトランプを取り出す。

 甲冑侍の方に投げ、兜と鎧のつなぎ目に突き刺し。『リトルボム』上空に投げて、


「『チェンジ』!」


 パチン、と指を鳴らす。

 突き刺さったトランプと爆弾の位置が交換となり、甲冑侍たちは爆散した! それでも振り出しに戻っただけ!


 その後は多彩な攻撃を見せてくれた。全部なんとかパリィしたけど。


 地面から腕を生やす技。ニョロニョロ生えてきて気持ち悪かった。ぶった斬り対処、対して脅威じゃない。

 鬼火を飛ばす技。クソみたいに変則的に動くゴミ。こいつが来たらとにかく距離取って『水鉄砲』を撃ちまくる。火だからちゃんと消火可能。

 墓を落とす技。ランダムだから見て対応するしかない。まったく、墓を何だと思ってるんだ。


 エトセトラエトセトラ……。


「一体いくつあんだよ、お前の技」

「ククク……さぁな、俺様も多すぎて覚えてないぜ」

「自分の所持スキルくらい把握しておくべきだと思いまーす」


 実際、俺は今持ってるスキルは全て覚えている。じゃあなぜ使わないか? 結構な割合で産廃だからだ。『手品師』ってマジでネタジョブなんだな〜ってよくわかるスキルしてるもん。花束出したりムーンウォークしたり、冒険するなら確実に使えないね。料理人とかの方がまだ戦闘に有用なスキルを持っているだろう。


 ◇◆◇


 えー、体感30分くらい戦ってる。

 本っ当に終わりが見えん。タマグライはおそらく無限に技出せるし、俺はMPが尽きないから無限にスキルが打てる。結果無限の戦いになりそう。

 お互いの技に慣れてきたからそんなに集中もしてない。むしろ雑談始めちゃってる。


「おい小僧、お前の好みの女を言ってみろ」

「うーん、恋愛とか一切無縁で生きてきたからあんまわかんねぇなぁ〜」

「ケケッ、つまんねぇ野郎だ。ちなみに俺様はキレる女が好きだぜ? 刀だけにな!」

「おうおう、それなら俺の知り合いに1人よくキレる娘がいるんだわ。キレ散らかして暴れ出したらもう手がつけられねぇよ」

「それと、何がとは言わんがデカい方がいいな」

「あぁーそれならダメだ。何がとは言わんがあいつは男といい勝負だぜ」

「ガッハッハッハ!」

「ハッハッハッハ!」


 笑いあった直後に、互いをキッと睨みつける。(タマグライに睨みつける目があるかは知らんが)


「「死ねぇぇぇぇぇ!!!」」


 渾身の一撃がぶつかり合った。ガキンッと音を立てて二者の間に距離ができる。


「ねぇねぇそろそろ勝ち方教えてくれてもいいんじゃねぇの? 流石に飽きてきたね」

「わかったわかった。教えてやるよ」

「30字以内で簡潔にたのむ」

「俺に勝ったら勝ち方は教えてやるよ!」

「何言ってんだくたばれッ!!」


 クソが。結局しばらく戦うことになりそうだ。

 疲れたね、流石に。

 いい加減くたばれタマグライ。攻撃全部見切ってるしそろそろつまらねぇよ……。


「まぁ、飽きてきたってのは俺様も同じだな」

「だろ? じゃあ俺の勝ちってことでさっさと帰れ」

「ケケッ、負けて嫌いなもんでよ。最後に特技でも披露させてもらうかな」


 そう言うとタマグライは俺から距離をとり、攻撃を中止した。

 そこに追撃を加えようとするが、バチッと謎の力で弾かれる。変身中は無敵の法則かよ。ってことはここから来るのは超大技!


「さァこいつに耐えられるかな? まぁこれで死ななかったのは"アイツ"だけだが」

「おうおうアイツが誰だか知らんけど、とりあえず2人目になってやんよ。そしたら次から「この技は今まで2人しか耐えられなかった技(笑)だ」って紹介しろよな」


 タマグライが片方の足をグッと引き、構えを取る。

 そしてさらに紫のオーラを放つ。


「お前らから喰らった経験値、その全てをぶっ放す大技だ。行くぜ? ……『原初顕現、タマグライ』」


 タマグライが炎が纏い、形を成す。それは実体となり、巨大な太刀となった。


「これがアイツに負ける前の俺様の姿だ」

「なるほどだから原初」


 いやでもデカくなっただけならまだ行けそうか? 技が来ないとなんもわからん。


「カカッ! これで終わりだ。お前の魂全て喰らい尽くしてやるぜ……『魂絶こんぜつ』!!」


 横からクソデカ刃が迫る……! タイミングさえ合わせれば……! 今ッ!!


「『居合』ッ!!」


 タイミング完璧、角度完璧。俺の刀はタマグライを弾……けないッ!?

 バキッ!! と「至高の刀」は無惨なことに……。

 バカな、折れにくいと言われている刃で受けてこれかよッ!? 力技すぎんだろ!!

 そして俺の身体は両断され、グロテスクに死亡した。








 〚ユニークスキル:死者の魂が発動します〛

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る