第44話 魅せし妖刀

 さてさて墓を出ると既に大和村は「血塗られた戦跡」と化していた。おい広がりすぎだろテメェ。レベルと比例して広くなるのかなこれは。今何レベなのか知らんが。

 さぁ、再戦といこうじゃないか!

 爆発およそ2回分程度のところからは「血塗られた戦跡」となっている。あの宿屋で立てた作戦を復唱しながら俺はゆっくりゆっくりと歩いていった。


「――っと。これで完璧だな」


 よし、サブプラン及びサブサブプランも復唱完了。あとは実践のみだ。

 刀の円形闘技場から2,3本引っこ抜き所持アイテムの中に入れて、開いたところから入っていった。


「私を……殺、せ……」


 真ん中らへんに行くと前回と同じ殺せ殺せのラセツさんが待機してる。安心しろ、ソッコーでお前も妖刀も全部ぶっ飛ばしてやるよ。

 あれ、レベル今何? ふむふむ、……1000!? 一体俺のやつを何倍すればたどり着く数値なんだろうね!

 地面に突き刺さった「至高の刀」を抜くと、再び着流しの衣装にチェンジされる。これなかなかカッコいいと思うんだよね。


 戦闘開始、無言でタマグライを振るラセツ。対し俺は『居合』で応戦、パリィ成功ッ!


「『イリュージョン』」


 すぐさま俺はマントに隠れて透明になる。

 ラセツは標的を捉えられず首を回す……今ッ!!


 完全な死角から『飛燕』で背中に斬撃。

 深めの一撃が入る! あと4,5回くらいであの技が……


「『魂――」

「はぁッ!?」


 おいおい嘘だろ流石に早すぎる! 一撃で殆んど削れたってことは無いだろう。レベルアップしたら削る割合も減るのか!?

 まぁ問題ない。少し予定を前倒しするだけだ。


「『綱渡り』! そしてもう1つッ!」


 俺が無い発動したのは未だに正規の使われ方をしたことが無いスキル。もちろん今回も縄しか使わない。

 全力で振ってラセツの足に巻き付け、続いて取り出したのはさっき回収してきた刀! つかに持ってる縄を巻き付けて地面に突き刺す。これで動けないだろう! あとは『ローリング・ボミング』で距離をとって……


「――喰』」


 ブチッ


 あ、余裕で切れたわ。だが想定内。止められたらラッキー程度だったもん。

 さぁ次はもう気合いゲーだ。根性論バンザイ。


(あと少し…………来るッ!!)


 不可視の侍から飛ぶ斬撃、それに対抗するためにはズバリ、フライングしかない。


「ここだァァァ!! 『居合』ッ!!」


 刀は虚空に向かって振られたかに見えた。次の瞬間!


 ガキンッ!!


 仄かに紫の光を怪しげに放つ刀が現れた。そして火花を散らし俺の刀と反発する!

 バカめ! 絶対に来る攻撃なんてわかってりゃあカウンターのカモでしかねぇんだよォォォ!!


 そして『居合』で弾いたから次の攻撃は相手のSTR攻撃力参照! 相手はレベル1000のモンスター。


「つまり超高火力技が飛ぶことになるぜッ!!」


 俺は『一閃』発動の構えをとる。少し狙う場所は低めに。動くな動くな。確実に当てる必要がある。


 


「『一閃』ッ!」


 地を蹴り高速で突進。そして刀を横から振り、俺はをへし折った!


「EXモンスター:魅せられし侍ラセツ。その正体っつーかなんというか。とりあえず本体はお前だな、妖刀野郎?」


 俺の問いかけに対し答える。


「クク……大正解だ」


 ラセツではない。もちろん俺でもない。言葉を発したのは紛れもなくあの妖刀タマグライ。

 最初に戦った時、別のモンスターのように感じられたこと。親父さんの「あいつではなかった」。その他諸々から俺が立てた雑な推測。


 ラセツはタマグライに操られているだけ、ということ。『魂喰』はラセツの魂を喰らって身体の主導権を取るって感じかな。レベルはラセツじゃなくてタマグライのレベル。

 つまりタマグライを倒すことが勝利条件!


 〚EXモンスター:魅せし妖刀タマグライが現れました〛


 あのひび割れたウィンドウが現れ、やつの真名を表示した。

 俺は『居合』を発動する準備をして次の攻撃に備える。


「まぁ待て。少し話でもしないか? 俺様は今気分がいいんだ」


「EXモンスターはよく喋る」ってやつだな。なるほど。


「じゃあ、掲示板使えなくしたのはなんでだよ。てかどうやった」

「俺様の情報を隠すためだ。知る手段が無ければ直接来るしかなくなるだろう? そいつらを斬って俺様はさらに強くなる。俺様レベルになると、この世界への干渉なんて簡単なんだよ」


 世界……つまりゲームシステムとかプログラム? なかなかエグいことやるな。こいつゲームのボスだぞ? しかも人間みたいな考え方してやがる。かかぐのちからってスゲー! だわ。


「レベル上げたいみたいだけど、それで何やるんだよ」

「この世界を喰らい尽くす。お前らも……そして最後には俺を消した"アイツ"もな」

「アイツ……?」

「ここに来たやつの殆どがその欠片を持ってたぜ? お前は違うみたいだが」

「なんの事だかわかんねーよ。さてと、そろそろバトらないか? 身体動かしてないとアドレナリン及びその他諸々が消えちまう」

「ククク……そうだな、じゃあ死ね」


 いつの間にか折れたはずのタマグライは、元通りになっていた。

 再び視界から消える。

 おおよそ斬撃が飛んでくる場所を予測して、大袈裟な回避行動をとることで避ける。しっかり動きとタイミングを見て対応するのだ。

 何回か繰り返すと、なんとなく掴めた。よし、ここからが本番!


「『居合』!」


 ギリ見えるようになってきた斬撃を弾き、『一文字斬り』を入れる。


「カカッ! お前の攻撃なんか通らねぇよ!」


 ラセツもといタマグライはおかしいくらいの速さで弾く……が、

 俺の不可視の斬撃が鎧を斬った!


「なんだ、今の攻撃は……!」

「お前の攻撃みたいに見えなくすれば当たるんじゃないかな〜って」


 もちろん俺が超高速で動けるわけがない。俺が使ったのは『イリュージョン』のスキル。それを「至高の刀」に被せて隠して左手に持ち、入る時に回収した刀を右手に持ってブラフとしたのだ!


「面白ェじゃねぇか……。ならこれはどうだ?」


 無数の刀が鎧を破って内側から射出された!


「俺様レベルになると自分を増やすことだってできんだよ」

「1体っつーか1本でも死にそうなのに更に増やすなァァァッ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る