第40話 サムライ(レベル0)VS墜ち武者(レベル28)

 表示されたウィンドウ……角にヒビが入っているように見える……。ユグドラシルの時もこんなのがあったっけ? ダメだそこまで見てなかった。

 そしてラセツの頭上には、今までモンスターには見ることの出来なかった「Lvレベル」の表記が。現在、Lv28。EXのくせにレベルが低いってどういうことだよ。


 で、「その刀で殺せ」か。つまりこいつを取れば戦闘開始。

 深呼吸して準備万端……いくぞ!


 突き刺さった「至高の刀」を引き抜くと、俺の身体が光を放ち始めた。

 そして服装が変わり、黒の着流しに。カッコいいんだが……なんだ、これは?

 するとスキルのウィンドウが表示される。


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 [スキル]

 ・一文字斬いちもんじぎり

 ・居合いあい

 ・飛燕ひえん

 ・一閃いっせん

 ・ハト

 ・リトルボム


 続きを表示...

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 なるほど理解した。漢字のカッコいいスキルたちは「至高の刀」を持ったことで追加されたのだろう。それしかアクションしてないからほぼ確定。

 刀とスキルが使える状態でこのラセツに勝てばいいんだな……といっても、

 やつは全く動かない。

 タマグライなる刀を構えて、そのまま微動だにしない。……まさか死にたいからお好きにどーぞってか?


「『リトルボム』」


 様子見に『リトルボム』を投げると、シャキンッという音が聞こえそうな斬撃が爆弾を切り裂いた。攻撃する気はあるみたいだ。

 続いて塩を投げてみるが……。あっ、全く効いてない。亡霊の類じゃないみたい。

 なら次は俺の攻撃!


「『一文字斬』!」


 刀を首めがけて横に振る。だが縦に向けられたタマグライで弾かれた。

 そしてついにラセツからも本格的な攻撃が始まる。

 繰り出されたのは素早い縦斬り。だが見れないわけじゃない。こんな程度ならイグニスとり合う方が難易度高いぜ?

 そこまででもない攻撃は続く。避けたり適当に弾いたりしてるだけで生存は容易い。だがこちらの攻撃もなかなか通らない。かなりの頻度で弾かれている。てかそもそも当たったとしたもダメージ1くらいしか通らないんだけど。


「おいおいお前、「殺せ」とか言ってる割にはバッチリ戦ってるじゃねえか。矛盾してるんじゃあねぇのッ!?」

「……私にも、わからない。ただひたすらに戦いを求めている……気がする」

「死にてぇのかバトりたいのかハッキリしろよ、この落ち武者っつーか墜ち武者がッ!  ――っとと、『居合』ッ!」


 ラセツの攻撃を見切り、『居合』――大体カウンタースキルだ――で攻撃へと変換する。

 少し鎧にヒビが入った! 『居合』スキルは俺じゃなくて相手の攻撃力でのダメージ計算、または固定ダメージだな! ならこれを主軸に立ち回るのがベストアンサー!


「『居合』ッ!」


 弾く、そして鎧にダメージ。損傷度はどんどん高くなっていく。なんつーか、拍子抜けだな。

 本当にEXモンスターなのか? ユグドラシルは最初っからフルスロットルだったのに、こいつはそこら辺のモンスターより少し強いくらいでしかない気がする。


「おいおいまさか手抜きかァ? 本気出さないのがカッコいいのは中2までだぜッ! あんたもうじーさんレベルだろうがよ! ――『居合』!『飛燕』ッ!!」


 カウンターと同時に飛び上がって身を捻り、回転を加えた斬撃が兜にヒット! ご立派な飾りがバキッ! と砕け散る! ざまぁ!

 着地と同時に『一閃』を発動。超高速でラセツへと突進し、腰あたりに斬撃!

 バランスを崩しうめき声を上げながらこちらに刀を振るが、『居合』により全て無効化。MPがある限りは通るもんはねぇよバーカ!


 ラセツの攻撃、防御パターンは全て把握した。あとは一方的に殴るだけのゲームと化した。クリア条件はラセツが倒れるまで!


「ほんっと大した事ないなァ! ユグドラシルが実はEX最強のモンスターだったなんてオチは流石に無いよな……?」


『居合』からの『一文字斬り』で殆ど胴体の鎧が壊れかけたその時、ラセツの動きが停止した。


「ははーん、これから隠し玉って様子だな? いいぜ、全部受け止めてやんよ!」


 ガシャン、と音を立ててラセツが片膝をつく。……マジで倒れるとかじゃないよな……?


 そう思った瞬間、ラセツの右手、タマグライが邪悪すぎる紫の光を放つ。


(来る……ッ!)


 その光から瞬時に技が来ると確信した。少し身を引き動きを目で追うことに全神経を注ぐ……。

 そして……


「『魂喰タマグライ』」


 この世の全ての悪をもってしても足りない、そんな声が静寂に響く――

 瞬間、視界からラセツが姿を消した。


(うっそだろ!? 何も見えな――)


 思考する間すら与えず、ラセツは俺の眼前にてタマグライを振るった。


「居ぁ――

「遅い」


 間に合わない。そう思うより先に、俺の身体は腹のところで両断されていたッ!

 上半身だけになった俺にラセツは追撃を加えようとする! 待て待てお前オーバーキルだろうがッ!!


 ザシュッ! と、俺の身体はさらに4分の1になって死亡していった。

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