第39話 EXクエスト:魂喰
後で公式からのアプデ情報を確認したところ、アプデ予定日にはしっかり本日の日付が書かれていた。掲示板だけで情報見るのやめようと思う。
半日と少しのメンテナンスを終え、再びリベルタスへ。ログインすると、前回セーブした大和村の「畳」と「布団」が敷かれた部屋。和の雰囲気ってなんか落ち着くなぁ……。
さてと、「至高の刀」を見つけたから次はEX探しの旅に出たいが――
〚AIナビゲーター「リベルタス」の初期設定を完了させてください〛
あったなぁ、今回のアプデで1番興味ないやつ。
攻略サイト見るとかならありだけど、ナビゲーターまではいらん。自分でやること見つけてやり方探すのがゲームってもんだろ? ナビゲーターを使う人たちを否定するわけではないが、俺はそう思う。故にこのシステムには退場願おうか。
ウィンドウを消そうとしたが、
「……
どうやら初期設定は義務らしい。仕方ない、適当に終わらせよう。
〚髪のパーツを選んでください〛
……
◇◆◇
自分で作るとなると、やはり拘りたかった。
最終的にAIナビゲーター「リベルタスちゃん」の見た目は、空色のパーマ風味髪型とそれと同じ色のワンピース少女になった。ナビゲーターというとシステム色な青というイメージがあるのは俺だけかな? まあいいや、とりあえず完成。
製作時間、およそ1時間。
その他口調だとか俺のプレイスタイルだとかも設定して、ようやくリベルタスちゃんは起動した。
「こんにちは、ボクはリベルタス。キミの冒険を
「動作良好だな。それじゃバイバイ」
設定ウィンドウを開いて「AIナビゲーター」の項目を探す。ON/OFFの切り替えスイッチを押してリベルタスちゃんには退場してもらった。
キャラメイクには拘るけど、使わない。それが主義だから。
さぁ切り替えて行こう。目指すは「血塗られた戦跡」!
◇◆◇
とは言ってもランダム出現、簡単には現れ――
モノローグ終了前にあたりが暗くなり、赤い月が現れる。そして空から降ってくる無数の刀、俺を中心に円形に降り注ぐ。まるでコロシアム。
――ちゃったよ……。現れちゃったよ「血塗られた戦跡」。俺のフラグ建築能力はいい方向にもはたらくみたいだ。だが……。
噂に聞いてた甲冑侍が出てこない。「至高の刀」を持っている状態だからか? てか甲冑侍どころかなにもない。
刀の円形闘技場と赤い月、それ以外はなにもなし。何かアクションを起こせば現れたりして?
「そぉーれっ!」
刀に蹴りをいれる……が何も起きず。
そこら辺の石を月の方に投げても何も、正座して待ってみても。
あとありそうなのは……。
「これか」
コロシアムちょうど真ん中。そこに鍵の如く「至高の刀」を突き刺す。
……反応なし……に思えたが!!
〚EXシナリオ:
来たぞぉぉぉぉ!!!
苦労に苦労と苦労を重ねてよーーーうやく2体目のEX!! ユグドラシルはクッソ簡単な条件だったのに、こいつはクッソめんどくさかった! さっさと倒してやろうじゃねえか!!
EX発見に歓喜していると、どこからか人が現れた。
黒い兜鎧、放つオーラは今まで見てきたモンスターの比ではない。甲冑侍ってわけじゃないよな。威圧感、とにかく存在感が半端ない。ユグドラシルからもこんな感じはしなかったぞ?
「その刀……なぜお前が」
「至高の刀」を見てそう呟く。
「メタ的なことを言うとお前に会うための必須アイテムだからだよ。見つけるまで苦労したんだからな?」
「……そうか……」
「……ところで、この刀ってお前にどんな関係があるんだ? すこーし気になるから教えてほしいんだけど」
「……いいだろう」
そいつは少しうつむき話し始めた。
「それは私の親友が、私のためだけに打った刀だ」
「親友……あの親父さんか。でもあいつはその刀を駄作って言ってたぜ?」
「駄作……そんなわけがないだろう。その刀に勝る剣はこの世に存在しない」
俺が刀の良し悪しがわからない素人じゃないのは安心した……が、
「じゃあ、この刀はあんたが持ってるはずだぜ? あんたのためのオーダーメイドでアイテムの名に恥じない「至高の刀」。なのにそれは今ここにある。あんたが持ってる刀は別物に見えるが?」
「私は……"魅せられた"のだ」
「魅せられた……?」
「刀を受け取ってからすぐの戦にて、私はこれを見つけてしまった」
そう言って腰の鞘から刀を取り、見せる。
紫がかった刀身、だが美しいというより邪悪という印象だ。
「妖刀タマグライ――この刀だ。一目見た瞬間から、私は私でなくなった、そんな気がしている」
「タマグライを手にしてからというもの、百戦錬磨であった。どんな戦でも自由に身体が動く、斬れば斬るほどまだ斬りたいという衝動が強くなっていった。……そしてついに親友の刀を、捨ててしまった……」
「親友はそれを見つけたのか、ある時私に詰め寄った。「どうして俺の刀を使わない」、と」
「……答えられなかった。いや、「私の答え」を伝えられなかった」
「私ではなかった私が答えたのは「お前は邪魔だ」……心にもない言葉だ」
「口にしたことに気づいた時、もう遅かった。私の眼の前には変わり果てた親友の姿があった」
「もう私は私を止めることができない。またあいつのような人間を増やしてしまうだろう。次の犠牲が出る、その前に――」
「その刀で私を、殺せ」
〚EXモンスター:魅せられし侍ラセツが現れました〛
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます