第32話 レイド終了!運営がなんとかしてくれる!

「誰か! 助けてくれ、縛られているんだ!」


「精霊の滝」付近。少なくはない通行人たちへ、何も無いところから叫び声が聞こえる。

 立ち止まって「なんだ今のは」と少し見渡すプレイヤーもいるが、誰も彼に気づくことはできない。

『イリュージョン』のスキルはしっかり発動しているな。無効化されることがなければ絶対にあいつの姿を見つけることはできないだろう。

 そのまま空腹かなんかで力尽きな、ざまーみろ!


 〚称号:道外れし者を獲得しました〛


 外道……ってことかよ。いやいや俺被害者だから! ちょーっとくらい懲らしめてもいいよね!?


「っと……。そろそろ次のレイドか。急いで準備しなきゃなぁ」

「待てッ、少し話を……!」


[ お先真っ暗 から100000リベラルの受け取り依頼が届きました]


「これは……?」

「10万でどうだ。これでスキルを解除してくれないか?」


 なるほど金で解決しようってことか。確かに所持金には超絶困ってるかなぁ。乗ってやるのも……


[100000リベラルを受け取りました]


「じゃあこの縄を――」

「うん、ごちそうさま。じゃあグッバイ!」

「え……話が違うぞ!?」

「確かに金は受け取った……。だが解除するとは誰も言ってないのだよッ!!」

「貴様……ッ!」

「ハッハッハッ! そんな上手い話があるわけないだろォッ!? それじゃ、俺は次のレイドに急がなきゃね〜。サヨナラ〜」

「このクソ野郎がァァァッ!!!」


 〚称号:道外れし者にエフェクトがかかります〛


 後で調べてわかった。称号はそれに相応しい行動を取れば取るほどエフェクトがかかるらしい。


 ◇◆◇


 その後も『躱撃解放』と『すり替え』のコンボで瞬時に終わらせ、無事レイド期間は終了となった。

 あれ以来、俺を襲う人は1人としていなくなった。「お先真っ暗」が掲示板にしばらく姿を見せなかったことで察したのだろう。


 レイド期間終了からしばらくして、今回のレイドの上位プレイヤーの名前が色んなエリアにでかでかと表示されることになった。当然ながら俺は1位だ。流石にあのやり方よりダメージ出せる方法あったらクソ調整だからな。


 そして与えたダメージも表示される。

 およそ200万のダメージで2位のイグニスに対し、俺のダメージは……なんと1000万超! 2位と5倍以上の差をつけて優勝!!


 後で掲示板を覗くと、案の定、大いに荒れていた。

 自分たちの中で、不正行為を働いていると思っているプレイヤーが処罰もされず堂々の1位となっていることに対する不満の書き込みで溢れていたのだが……

 すぐに運営が「今回のレイドでの不正行為は一切ない。結果は全て正規プレイでのものだ」と説明し、ゼロのチーター疑惑は晴れていった。流石運営さんだ。やはり絶対的な発言力を持ってるぜぇ!


 代わりに、正規プレイであり得ないレベルのダメージを出した謎のプレイヤーへの考察スレッドがいくつも作られた。

 スレッドでは、誰が撮っていたのか知らんが……中華三兄弟との戦闘を始めとしたレイド期間中の俺の映像がアップロードされていき、装備や使用スキル、プレイスタイル……さらには脚や腕、身体の細部に至るまでが公開されてしまった。……いやなんでそこまで特定出来るんだよ。そもそも俺のプライバシーはどこへ? 全世界に俺の情報が公開されまくってるんだけど、どうすんだこれ。


 ちなみにこの場において、イグニスは一切の発言をしていない。故に俺がレベル0の被害者であることを知るものは、未だ俺とイグニス、そして運営さんしかいない。

 もしあいつらが俺のこと知ったら超驚くだろうなぁぁぁ! 別に教えるつもりないけどッ!!


 ということで、1位となったプレイヤーの謎を残して、第一回のレイドバトルは終了となった。


 いやー、疲れた疲れた。2日目以外は一瞬で過ぎ去ったけど、終わってみると疲労がハンパない。今日はログアウトして長時間の睡眠に……

 おっと忘れてた。上位プレイヤーには報酬があったんだよな。


 メールボックスに既に送られていた[レイドバトル:エンシェント・ドラゴン 上位入賞賞品]を[開封]ボタンで開けると、


[アイテム:古龍の剣を獲得しました]

[アイテム:古龍の雫を獲得しました]

[スキル:古龍咆哮を獲得しました]

[ユニークスキル:古龍の魂を獲得しました]

[称号:古龍撃滅を獲得しました]


 うおっ、名前が古龍古龍古龍で古龍ざんまいじゃねえか……! どれどれ、詳細は……

 あっ、全部俺には使えないわ。

 剣は攻撃力が高いだけ。雫は攻撃力を上げるバフアイテム。咆哮は相手を怯ませる。魂はパッシブスキルで全ステータス10%アップ……。咆哮以外俺使えないんだけど!?

 使えない? なら道は1つ!


「……売るか!」


 豪華景品を有効活用処分するためにハジマーリの街へ向かおうと後ろを向いたその時、


 目の前に黒の仮面に黒のスーツを着た者が現れた。

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