第31話 もちろん仕返しはするよねぇ!?

 最後の敵が粒子となり、その場にいるのは俺とイグニスだけ――あっ、ドラゴンもいるじゃん。よく見たら色んなとこボコボコになってるし。俺たちが戦ってる間にも一応ブレスとかは吐いてたんだな……。ご苦労さま。


「で、さっきの「ダブ」とか叫んでたやつは?」

「技名に決まってるでしょっ! いい感じにつけてあげたのにあんたが変な叫び声出すから!」

「ちなみにどんな名前で?」

「……ダブル・インパクト……」

「うーん、20点。安直かつダサい。最初の村に『ハジマーリ』の名前付けたやつの方がまだマシだと思うぜ」

「かかと落としのあんたに言われたくないわよ!」


 と、その時。話をしてるところにドラゴンがブレスをチャージする音が。


「うるさい!」


 イグニスがドラゴンを睨みつけ、『ブレイズツイン』のスキルを発動――あ、ドラゴン死んじゃった。レイドバトルのボスなのに秒で死んじゃった。一応俺が大半削っていたとはいえ、「うるさい!」って殺されるドラゴン可哀想だな……。


 ボスが倒されたことで、レイドバトルの空間から俺たちは退場させられた……。


 ◇◆◇


 久しぶりに戻ってきた開催場所の広場。周りにはプレイヤーの大量の遺品が……たぶんイグニスが倒した「そんなやつら」の物だな。てかすっごい量あるじゃん。よく倒せるなぁ……。


「ところでさ、なんで俺そんなに狙われたの? 特に悪いことしてないけど……」

「あんたはその気が無くても相手にはそう見えるのよ」

「というと?」

「ほら、これ」


 イグニスはそう言って掲示板のとあるスレッドを見せた。タイトルは……[イキリチーター制裁祭りwww]?

 スクロールして書きこみを見てみると……

 なんじゃこりゃ。話題の中心が「ゼロ」――俺である。


 ふむふむなるほど。俺の戦法が強すぎたが故にチートを疑われて、チーター狩り……と。ふざけんな。

 こっちはただのバグの被害者なんだよなぁ。今まで根性でやってきたってのに……チート疑われるとか。あれだ、前めっちゃ絵が上手い人が「努力してるのにのに天才って片付けられるのはムカつく」って言ってたけど、おそらくあれに近しい気持ちになる。

 そう考えるとなんかすっごいムカついてきた。

 書き込みの様子からして首謀者はこの「お先真っ暗」ってやつか。

 よし、ちょうどスキルもたくさんあるから復讐、やってやろうかなァ?


「てかイグニスお前、このスレ見て駆けつけてくれたのか? 案外いいやつなんだな」

「ちっ、違うわよっ! 別にあんたが理不尽にイジメられてるのが見てられなかったとかじゃないんだからねっ! あんたは私がぶっ殺すのっ!」

「お、ツンデレポイント+50だな。可愛いとかあんじゃん。短気の娘のくせに」

「殺すっ!!」


 剣をこちらに振るが、俺は危なげなく回避。割と身体に染み付いてる。

 その時、ウィンドウが表示された。


[☆躱撃:1]


 ……そうじゃん。『すり替え』スキル使い切ってたじゃん。

 さっきのより前のレイドで使ったから1つはクールタイム中。そしてさっきはドラゴンに1回、回鍋肉に1回。これでスキルは全て発動不可時間クールタイムへと入る。

 つまり、最後の一撃は『すり替え』なしでそのままポイントが消費されてることになる!! しまった!

 次のレイドまではおよそ30分。どうやってポイントを回収すれば――あ、


「バーカバーカ! そんなんじゃ当たんねぇんだよォ! ツンデレちゃんがァ!」

「――ッ!!!」


 こいつイグニスに手伝って貰えばいいじゃん。


 次々と繰り出される斬撃。全て躱してポイントに変える。……というのをしばらく、たまにおちょくりながら躱撃ポイント回収に励んだ。


 もともとあった3000と数百ポイントには届かないが、それでも大量、1000ポイント以上回収してから俺は全力で逃走した。グッバイ!


 ◇◆◇


 11時のレイドが終わった後、俺はスキルを発動した。


「『尋ねバト』」


 尋ねバト――プレイヤーをハトで探し出すことが出来るスキルだ。名前を書いた紙を持たせて少し待つだけでその人の居場所がわかる。ぶっ壊れスキルだって? いやいやそんなことはない。

 このスキルでその人が見つかる確率、2%だからな!

 しかしMP消費は300と中々に大きい……。さて、ここで俺のMP確認。


 --------------------------------------

 MP ■■■■■ 65535/65535

 --------------------------------------


 つまり、そういうことだ。

 さぁ飛び立てハト! 俺をリンチにしようとしたやつを見つけ上げるのだァァッ!


 おびただしい数のハトが空へ飛び立っていった。


 数分後


 全てのハトが同時に俺のもとに帰還した。そしてプレイヤーの居場所のウィンドウが大量に表示される。

 もちろん、ほとんど知らないプレイヤーの名前ばかり……

 焼き肉、ピッツァ、ハンバーガー、コンソメ、ジロリアン……やめろ腹が減る。まだリアルでは昼飯食ってないから名前だけで飯テロなんだよ。

 美味しそうな名前、適当につけた名前、カッコよさげな名前とたくさんの名前名前名前をスクロールしていくと……あった。


[お先真っ暗]


 場所は……ゲッ、割と遠い。俺がまだ行ったことない「精霊の滝」近くの平原だってよ。

 遠くてもいいや、とりあえずレッツゴー!


 ◇◆◇


「お前かァァァァッ!!」


 黒髪長髪で四角メガネの男を『綱渡り』の縄で縛り動けなくする。プレイヤーネームはもちろん「お先真っ暗」。


「だっ、誰だお前は!?」

「安心してねぇ〜。悪い人じゃないからね〜。特に、チーターなんかじゃないからねェ〜」


 その言葉で彼は自身を縛り上げる者の名前を察し、顔面蒼白になった。


「待ってくれ! あれはただの勘違――

「問答無用ッ! 『イリュージョン』!」


 マントを被せて周りから見えなくしてやる。これでほどいてくれるプレイヤーはそう簡単には現れてくれないだろう。


「「勘違い」だけで安易に行動すんなよ。確証がない情報のせいで俺ぁクソ迷惑かけられたからな!」

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