第30話 俺にも活躍させて!

「に、兄さん! あいつたしかイグニスだヨ!? レベル最大の!」

「流石に私たちでも分が悪い……」

「いいや、その程度で我ら中華三兄弟が止まって溜まるか! 勝利は常に我らにあるッ!」

「「……了解!」」


 俺達を取り囲むようにして三角形に立った。

 そして地面を蹴って飛び掛かるッ!!


「「「喰らえッ! イグニスッ!!」」」


 イグニスの方かよッ! 俺はどうでもいいってか!?


 それぞれの技をイグニスに向けて放つ。しまった! イグニスはまだこいつらの武器もスタイルもわかってない、初見で攻略するのはなかなか厳しい……


「『クロスバーニング』ッ! 『ブレイスツイン』ッ!」


 双剣をXの形にして振り、炎の斬撃が飛ぶ。薙刀を持った麻婆豆腐は武器と共に弾かれた!

 直後に近距離2人回鍋肉と担々麺には双剣の片方ずつで斬撃、同様に吹っ飛ばした。

 すかさず麻婆豆腐のもとへ『ソニックブーム』で詰め寄り――


「『螺旋炎らせんほむら』!」


 回転斬りが炸裂! 腹部を斬られた麻婆豆腐はなんと真っ二つ! 無惨な姿で光の粒子へと変わってしまった……。

 このゲーム、身体が切断とかあるのかよ?……。あの時負けてたら俺もあんなになってたのか、ひぃ〜恐ろしい。生きてるって素晴らしい!


「さて、まずは1キルね。次に死ぬのはどっちかしら?」


 余裕の笑みを浮かべて回鍋肉と担々麺に恐怖を植え付けるイグニス。その言葉と様子で俺は確信。


(俺、いらなくね……?)


 イグニス1人でこの3人全員相手にできるじゃん、力技で。レベル高いし、自由に動けるし、武器も強いし。俺がいなくてもなんら問題ない。

 ……だけど、


「急に乱入してきたお前に全部良いとこ取られて溜まるかよォーーッ! 中華野郎もどうせ俺なんかすぐ倒せると思ってんだろ!? えぇ!? いいぜいいぜ、今からこのゼロがお前らなんかよりずぅーっと強いこと見せてやらァッ!!」


『ローリング・ボミング』でまずは回鍋肉に接近する。もちろん『ソニックブーム』よりは遅い。いやあれほぼ瞬間移動みたいな動きするからな!?

 角度的にはおよそ60度くらいでふっ飛びながら俺はイグニスに叫ぶ。


「おいイグニス! ちょっとヌンチャクの方相手してくれ!」

「言われなくてもやるわよ。カンフーの方も倒しちゃっていいかしら?」

「あぁ〜やれるならやってもいいぜ? でも俺が一瞬で片付けるからできないだろけどなッ!」


 回鍋肉のほぼ真上に来たところで右足を思いっきり振り上げる。


「お前には、お前の技そのままそっくり返してやるぜ! 自分の技でくたばりなッ! えぇと……とりあえず超スーパーミラクルかかと落としィッ!!」


 叫びながらかかと落としを繰り出すッ! 瞬時に回鍋肉は足を出してカウンターを食らわせようとするが……玄人故の読み違いか。

 繰り出すべきベストタイミングなんてものを知らない俺は適当に足を振り下ろす! 来ると思ったタイミングより遅かったのか、俺のより先に振り上げられた回鍋肉の足は空を切る。直後、スネに俺のかかとがクリーンヒット!!

 悶絶する間もなく、俺の攻撃時スキルが発動する。


[スキル:躱撃解放が発動します]


 赤黒い稲妻と爆発音、回鍋肉はふっ飛び粒子と化した!!


「ヒャッハー! 相手の攻撃は見てから回避かカウンターすんんだよォォッ!」


 ざまーみろ達人。

 さて……イグニスの方は……うん、流石ヌンチャク。あの速さと動きには対応するだけで手一杯だよなぁ……。

 担々麺相手に防戦一方を強いられるイグニスに声をかける。


「あれれ〜? 余裕オーラ出してた割には苦戦してるようだけどォ〜?」

「黙ってて! すぐに片付けるからっ!!」


 かなり厳しそう。当たっても俺みたいに一撃で死ぬわけじゃないが、もちろん痛い。だから下手に動くわけにいかないのだ。

 まぁ流石"元"ノーダメプレイヤーだけある。ヌンチャクの攻撃はまだ1つも当たって……


「ッ!!」


 なぜこうも俺の思考は死亡フラグになるのだ。

 回避の後の僅かな隙にヌンチャクが襲いかかるッ!!

 ……フラグ建築現場監督としてカバーくらいしなきゃな。


 シルクハットから取り出した『ハト』を投げつける。

「うわっ!」という声を上げて怯んでヌンチャクも同時に引っ込む。

 それを見逃さないイグニスが剣を振りヌンチャクを遥か遠くへふっ飛ばした!!


「べっ、別にあんたの助けなんかなくても弾けたんだからねっ!」

「ホントに出来そうだから大してツンデレ感が出ねーなオイ!」


 出来そうというか出来るんだろうな、きっと。まぁいいじゃないの、一応共闘という名目だからカバーしたとかで。

 武器を失った担々麺に近づき、俺はスキルを発動する。


「『綱渡り』!」


『綱渡り』は本来崖や建物の屋根を繋ぐ縄を出し、それを絶対に落ちないで渡れるというスキルなんだが……もちろん、ここにそんなものはない。

 俺が使うのはその縄の方。

 担々麺の両腕と共に身体を縛り上げてやった。


「なぁイグニスよぉ。今のところお互い1キルだからさ、最後は一緒に倒せば平等だと思わないか?」

「そんなのどうでもいいわよ。じゃ、私が貰うわね――

「ちょっと待って! いいじゃん2人で倒しても! 合体技とかやってみたいんだよッ!」

「合体技ね……。いいわよ、やってあげる」

「マジ!? いやぁー、今までソロでしかゲームやってこなかったから憧れだったんだよねぇ〜」

「……あんたのリアルには踏み込まないでおくわ……」


 捕虜の如くぐるぐる巻きにされた担々麺を前にして、拳と双剣を構える。


「じゃあ、せーのでいくぞ!」

「オッケー、いくわよ……」

「「せーのッ!」」


「ダブ「うおりゃぁぁぁああああ!!」」

[スキル:躱撃解放が発動しました]

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