第29話 乱入、炎の双刃
ヌンチャク! 薙刀! 拳&足!! 絶え間なく飛んでくるそれら全てを死に物狂いで躱す。防戦一方、反撃の隙が全くねぇ! 適当なスキルを使おうとしても全部キャンセルせざるを得ない。んだよこの鬼畜ゲー!
「イー!」「アル!」「サン!!」
どれだけ避けようと、距離を取ろうと詰められまた攻撃。ちなみにこの掛け声で連携を取っているように見えるが、全くの無関係だ。たぶん適当に叫んでるだけ。「スー!」とでも返したいが……そんな余裕はないんだな、これが!
薙刀の柄の部分を弾き防げば、横からヌンチャク、上からかかと落とし。攻撃を誘導して同士討ちを狙っても、失敗。全部互いの邪魔にならない間合いができている! こいつらリアルでも中国的ななんかやってたりするのか!?
「さぁ、さっさと負けを認めたらどうだ?」
「大人しく降伏するネ!」
「我ら三兄弟の力、思い知ったか!」
縦横無尽に動きながら降伏を促す3人。あークソ。3対1はほんとキツいわ。ただでさえ縛りなのに、勝てるわけねぇだろアホが。
全部の攻撃が同じタイミングで来ていないことがギリ救いだが……
「
「「了解ッ!!」」
あぁーっ! 同時に来ないとか露骨なフラグだった! 3人まとめて攻撃仕掛けて来るやつじゃん!!
3人が攻撃を加えながら、ぐるぐると円形に俺の周りを走り始める。次第に速度は増していき、完全に逃げ場は失われた! マジで絶対絶命ッ!!
3人を同時に視界にいれることが不可能となったところで、揃った声が死を宣告する!
「「「中華
回転は消え、3人の攻撃が繰り出される!
後方、下段、絶対に外さない距離から音速に到達しようとするヌンチャク。
前方、中段、柄を掴むことが不可能な間合いから払われる薙刀。
上方、上段、岩をも砕かん勢いで振り下ろされる必殺のかかと落とし。
俺にその攻撃がヒットするまでの時間はほぼ同じタイミング! ヌンチャクを避けてジャンプをすれば薙刀に狩られかかとに砕かれる! 薙刀を避けてしゃがめばヌンチャクが振られ再びかかと! かかとを避けて身を横にしても薙刀とヌンチャクのダブルコンボ!
比喩、誇張、その他諸々全て抜きで、完全に詰みである。
(……ここで終わりか……。3対1にしてはよく頑張ったよな、今回は負けても……)
俺は静かに目を閉じ――
「『ブレイズツイン』ッッ!!」
ガキンッ! と炎を纏った双刃が薙刀とヌンチャクを受け止め、弾く。直後かかとにも斬撃が飛ぶ。
「何諦めムード出してんのよっ! あたしにほぼ勝っておいて、こんなコスプレ集団に負けたらぶっ殺すわよっ!」
そこに立っていたのは、間一髪で現れた救世主。鋭い目つきと、それに合わない可愛らしい声の赤髪ポニテ美少女。――そう、現時点でリベルタス最強のプレイヤー、イグニスである。
「お前なんでここにいるの!?」
「なんでって、途中参加に決まってるじゃない」
「そんなシステムあったのか!? ……いや、時間ズレた人とか人数足りないとこ用にそりゃあるわな……って、じゃあなんで今まで誰も来なかったの!?」
「なんか知らないけど、見張りみたいな人がたくさんいてね、プレイヤーの途中参加を妨害してたみたいなの」
「えっ、じゃあイグニスも入れないはずじゃ……」
「そんなやつらぶっ殺したわよ」
キルログの画面を俺に見せるイグニス。
うわぁ……。プレイヤーの名前がたくさんあるよ。恐ろしい子……!
「で、ようやくレイドに参加してみたら変な格好の男どもに殺されかけてるあんたがいたってわけ」
「そいつぁラッキー。助かった、助かった」
「あ、今ので貸し1だからね? 今度何か奢りなさいよ!」
「残念だったな。今の俺は怪しい店で有り金溶かして小1のガキより金がねェんだわ」
「それならその怪しい店の商品を奪ってあげるわ」
「バァーカ! ほとんど使用済みだァ!」
「……やっぱりそのまま死ねばよかったんじゃない?」
イグニスと(物騒な)談笑で少しストレスを緩和する。今まで胃潰瘍レベルで限界状態だったからな!
てかここのレイド封鎖してたって……こりゃ完全に首謀がいるタイプだな。1人のプレイヤーにここまでやるかぁ? 普通。
「じゃ、ちゃっちゃと終わらせるわよ! あんたはムカつくけど、集団でかかる卑怯者は許せないのっ!」
「共闘ってことか。いいじゃん、超アツくて」
「せいぜいあたしの足引っ張らないように頑張りなさいよ!」
「そっちこそ、前みたいに俺の爆発に巻き込まれんなよな!」
ふっ飛ばされて、体制を立て直した中華三兄弟の方を向き、背中を合わせて構えを取る。
前は敵だったが……今は最高に心強い味方だぜッ!
さァ、反撃開始だッ!!
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