第28話 参上、中華三兄弟!

 最後に立ちはだかる3人組。服装が中華風味の男たち。戦隊モノのような配置で、真ん中の身長高めなやつがリーダーだろう。

 おそらく普段から3人組でプレイしている奴らだな……つまり今までの敵とは違う。連携が取れた攻撃とか飛んできそうだなぁ。


「我が名は担々麺タンタンメン! 中華三兄弟の三男にして、ヌンチャクの使い手アルヨ!」

「我が名は麻婆豆腐マーボードウフ! 中華三兄弟の次男にして、薙刀の使い手!」

「そして我が名は――

「ほい、『リトルボム』」


 自己紹介を爆発でふっ飛ばした! 「ギャアァァア!!」と叫び声を上げて吹っ飛ぶ真ん中。この流れで行くと長男だと思う。


「きっ、貴様! 不意打ちとは卑怯ネ!?」

「うるせぇぇぇ! んなもん隙晒す方が悪いんだよこのバーーカッ!! 俺はプ〇キュアの変身中に「なんで敵さん待ってるんだろう?」とか思うタイプの人間なんだよォ!」


 どんな時でも相手にチャンスを与えるマヌケが悪いのさ! 俺に空気を読むとかは通用しないんだよ!


「大体なんのためにそれやってるんだ? 初手でジョブと隙晒して、何? カッコよさの為に勝ちとかは捨てたの?」


 俺が聞くと、麻婆豆腐を名乗る男が「ククク……」と笑い答える。


「勝ちは捨てた? ククク……まさか! 我々中華三兄弟は必ず勝つ、そして貴様にその名を刻むのさ!」

「私たち3人の前に敵無し、でアル!」

「へぇへぇそりゃあすごい自信だねぇ……。ところでその3人目が埋まってるんだけど?」


 2人の後方を指差す。そこには『リトルボム』でふっ飛ばされ、地面に突き刺さった(おそらく)長男が。


「あぁ、兄さん! 今助けるからな!」


 気づいた2人は長男を某ソードの如く抜き、回復アイテムを使用する……ところに


「『マジックトランプ』」


 3枚投げつけてやった。

 着弾と同時、発火! 放電! 竜巻! 3人は上空へ飛ばされていった! フハハハ口程にもないなぁ中華三兄弟!


 地面に打ち付けられ、3人同時に「ぐへっ」と声を上げたのを見て、もうこれ以上戦う必要は無いのでは、と思った。

 ということですっかり忘れていたレイドに戻ろう!

『ローリング・ボミング』でドラゴンの方へふっ飛び、拳を構え、放つ。

「ぺしっ」という気の抜けた音と共に、ウィンドウが表示される。


[スキル:躱撃解放が発動します]


 盛大な爆発音。ドラゴンの体力が8割近く削れる。

 さっきの戦闘で『躱撃』のポイントが少し溜まってるからその分加算されているらしい。


 さぁて、残りは『リトルボム』で――


 爆弾を取り出そうとした時、頭上スレッスレを何かが通過した。

 振り向くと、担々麺を名乗る男がヌンチャクを構え、戦闘ポーズを取っていた! 流石にさっきのじゃ死んではなかったか。


「チッ、外したか。だが次は当てるネ!」


 ヌンチャクを振り回し飛び掛かってきた!


「喰らうネッ!!」


 ヌンチャクがこちらに飛んで――


 ブンッ!!


 空気を切る音……速くねッ!?

 本っ当に間一髪で避けられたけど……ユグドラシルレベルで速いんだけど!? ヌンチャクってここまで加速するのかよ!


「まだまだ行くヨ!!」


 ブンッ! ブンッ! ブンッ!

 速すぎる鉄の棒が容赦なく何度も繰り出される。たまに地面に当たっているが、そこは削られ粉々に! 当たったら即死だけじゃなくて超痛いぞこれ!?


 だがそこまでの精度があるわけじゃない。何度かはギリ目視で安全圏内にいることがわかる。

 そこから見て速さに慣れる。……オーケー、オーケー。なんとなく掴んだぜ!


 ブンッ! と振られる直前、手首、腕の動き、ヌンチャクの角度、タイミング、全てを見て、安全圏へ身を動かす。

 次第に完全なる空振りとなる回数は増えていった。よし、攻略完りょ――


 スパッ!!


 別の空を切る音。振り返ると、たしか麻婆豆腐とか言ってた男。


「兄さんの仇、この私が取る!」


 薙刀を構えて突進! 長いリーチで飛んでくる攻撃は、これまた超速い!(もちろんヌンチャクほどじゃないけど!) あっぶねぇ!

 バックステップで避けると、すぐさま後ろでブンッ! すぐさま屈んで避けるが、また薙刀! しまった、薙刀とヌンチャクの超高速挟み撃ちが始まった!

 避けても避けてもすぐに次。ユグドラシル戦を彷彿とさせる。うーむ、ちょーっとヤバいかもしれない。


 ヌンチャクと薙刀、両方の攻撃は読めるが同時に来ると回避がキツい。耐えてるの奇跡だろ!

 前後からの同時攻撃を、薙刀を踏み台に躱して互いの武器をぶつけ合わせる。一瞬隙が出来たところで一気に距離を取る。

 少し離れて『リトルボム』で牽制しながら、作戦を――


 トンッ……


 何かが背中に触れた。

 またまた振り返ると、そこにあったのは足。

 黒く尖った靴を身に着けた足であった……!


「我が名は回鍋肉ホイコーロー。中華三兄弟の長男にして、カンフーを操りし者……!」


 ヌンチャク、薙刀、カンフー。中華風な技を扱う3人組を敵に回し、俺は悟った。


「……オイオイオイ。死ぬわ、俺」

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