第23話 何かを捨てる縛りプレイ

 その後は「素材集まるまで周回する!」と言ったイグニスと別れ、俺は次の地を目指すことにした。

 ……一体どこに行けばいいのやら。

 とりあえずマップを開いてみる。

 最寄りのダンジョンは『死霊の墓場』という場所だが、行きたくない。俺は自称ゲーマーでもホラゲーだけはやらない主義なのだ。行くならイグニスでも連れて行こうか。


 さて、何をするか……そうだった。


 そう言えばこのゲームはにはストーリーモードもあった。それを攻略してみるのも良いかもしれない。

 もしかしたらストーリークリアが前提のEXシナリオもあるかもしれないし。


 調べると、ストーリーの開始地点は、さっき行った『ハジマーリ』にいる町長さんらしい。早速行ってみるか!


 ◇◆◇


 ハジマーリに着き、白いヒゲを生やした村長を見つけて話しかけた。


 〚ストーリーシナリオ:伝説の始まり〛

 〚現在この世界の人類はは世界征服を目論む魔王の恐怖に支配されています。あなたが勇者となって魔王を討伐し、人々の平和を守りましょう!〛


「おぉ、あなたが我々を救ってくださる勇者様ですか!」


 ほうほう、王道のRPGといったところか。よし、俺は今から勇者だ。しっかり勇者を演じきってみせるぜ!


「そうです。私があの憎き魔王を倒すために立ち上がった勇者なのです!」

「これはこれはなんと頼もしい。早速ですが、街の周辺のモンスターを倒してきてもらってもよろしいですかな?」


 おいおいいきなりパシられてるじゃねえか……と思ったが、とりあえず話を進めよう。


 〚目的:ハジマーリ周辺のモンスター10体の討伐〛


 ◇◆◇


 街を出てからすぐにスライムやゴブリンなどを蹴散らし無事目的を達成。戻って村長に報告した。 


「流石勇者様。これでしばらくは街も安泰ですな。いや、実にありがたや……」


 感謝の言葉を貰ったところで、俺の視界になにか緑色のモノがあることに気がついた。


[名声ポイント 2]


 名声……なるほどなんとなくわかった。

 さっきみたいに誰かの依頼を達成すればこのポイントは増えるのだ。

 今はまだ少ないが、依頼をこなして名声を集めることで勇者として認められ、成長していく、というのがコンセプトかな。


 それならさっさと進めてしまおう。

 再び村長へ話しかける。


「村長さん。他に何かやることはありますか?」

「それなら、『ラビリンス・フォレスト』にいるエアフラワーを倒してきてくれませんか。あやつは森に入る人たちを傷つけるのです」

「いいでしょう、勇者であるこの私がきっちり倒してきてみせましょう!」


[目的:ラビリンス・フォレスト エリアボス:エアフラワーの討伐 ※必要レベル10以上]


 よーし、早速森へレッツ……あれ。

 なんか今すっごいことが書いてあった気がする。

 もう一度見直してみる。


[※必要レベル10以上]


 …………無理じゃねえか!!


 ストーリー最序盤クエストで必要レベルが10。別にこれは全く問題ない。

 だがッ!! 俺のレベルは0! それも固定!

 どう足掻こうと0のまま変わらない故にこのクエストへの挑戦権は永遠に手に入らないッ!


 くそう、自ら縛りプレイを選んだがためにゲームの要素1つを失うとこになるとは……完全に自業自得だけど。

 やはり俺はEXを倒すこと一本でやらないといけないんだな……。


 クエストのウィンドウをタッチし、詳細情報を表示させる。

 下へスクロールし、赤字で書かれた「クエストをリタイアする」の文字をタップすると、「本当によろしいですか?」と警告のメッセージ。


「…………はい……」


 ストーリー攻略を諦め泣く泣く返事をした。

 結構期待してたのになぁ……!



 とりあえず、過ぎ去ったものは仕方がない。

 別のダンジョンにでも挑戦してEXの手がかりを……


 ピロン


 メールの通知が来た。件名は……


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