第18話 メンテ明け、対人戦勃発!

 [モンスター研究所]のスレッドにはこんなことが書いてあった。


 ラビリンス・フォレストに、爆発するモンスターがいる。

 そのモンスターは奇妙な叫び声を上げて転がる。

 洞窟にも出現し、巻き込まれると地味にデカいダメージを食らう。

 プレイヤータグによく似たものを頭につけている。……と。


 うん、俺のことだな。このモンスター。


 特徴も出現場所も俺と一致しているし……。

 俺の姿を正確に視認できなかったプレイヤーたちがモンスターだと勘違いして書き込んだのだろう。


 しかも中には「実はこいつがEXモンスターなのでは……?」という迷推理をする者までいた。こういうのって真相を知ってる状態で見ると笑えてくるなぁ〜。


 それからしばらくメンテナンスが明けるまで、彼らの反応を楽しみながら時間を潰した。

 それと俺のあだ名は「爆破アルマジロ」になってた。せめてもっとかっこいい名前にしてくれよ……。


 ◇◆◇


「っしゃぁぁぁ!! 戻ってきたぞぉぉッ!!!」


 前回設定したリスポーン地点の宿屋からスタートした。

 しかし宿屋も作り込まれてるなぁ。ベッドの質感高級ベッドさながらだし、手触りのいい木製の壁がファンタジー感を出している。

 やっぱ科学の力ってすげー!


 さて、数時間ぶりのLOに感動したところで、次は何をやろうか。

 あの洞窟に戻ってボスのゴーレムを倒しに行くか……。いや、めんどくさいから後でいいや。


 マップを開いて周囲のものを確認してみる。

 何か面白そうな場所は……お、これにするか。


 俺の目に留まったのは、「ゴルゴーン遺跡」。古代文明みたいな黄土色の石で作られているっぽい、ザ・遺跡。

 外見からしてお宝とかがありそうな予感。それにEXモンスターに関係する何かがあるかもしれない。

 なぜかって? 古代といえば伝説だからだよ!


 ということで早速レッツゴー!


 ◇◆◇


 おぉ、真っ直ぐ進むぅ。『ローリング・ボミング』の精度がめちゃくちゃ上がってる。マップの軌道が今までジグザグだったのに、ほぼ直線に近くなってるよ。やはり努力は実を結ぶんだねぇ。

 そして回避をしているわけだから『躱撃』のポイントはどんどん増加していく。てかログがうるせぇ。「『躱撃』ポイントが1加算されます」ってずっと言ってくる。


「ハーッハッハ! 爆破アルマジロのお通りだァァッ!!」


 高笑いとともに吹っ飛んでいると、後ろから「きゃっ!」と可愛らしい声が聞こえた。

 しかし無視して進もうとすると……


「ちょっと待ちなさいよッ!」


 爆破で吹っ飛ぶ俺の襟を掴み、後ろに引っ張った。


「グヘッ」


 首に服が引っかかり変な声が出る。


「誰だよお前!」

「こっちのセリフよ! 急に攻撃して、なんなのよあんた!?」


 俺に叫んだのはポニーテールで赤髪の美少女。

 目つきは鋭く、色は金。背中の双剣はゲーム終盤のような派手かつカッコいい見た目をしていて、彼女がこのゲームを相当進めたプレイヤーであることを示している。


 そして頭上のプレイヤータグには王冠マーク。あれ、名前に絵文字って入れられたのか?

 名前は『イグニス』……どこかで見たような……


「死ねーーッ!!」


 一生懸命記憶を探っていると、視界に剣が現れた。さっきの双剣の片方だ。

 ギリギリのところで回避をする。


「うおっ、あぶねっ!」


 おいおい攻撃が当たっただけでそこまで怒るか!?

 いや確かに俺が悪いから……とりあえず謝ろう!


 回避で距離を取り、正座をして両手を地面についた。


「この通り、誠に申し訳……」

「死ねッ!」


 再びすんでのところで回避し、ブンッ! と剣が空を斬る。


「おい落ち着け、落ち着け。俺はしっかりとした謝罪をな……」

「謝っても許さないわッ! 今までノーダメでやってきたのに! もう最悪最悪最悪最悪ッ!! あんただけは絶対ぶっ殺してやるんだから!」


 あぁ〜、なるほど。それなら怒るわ。俺もノーダメチャレンジは何回かやってきている。本当に申し訳ない。……けど死にたくはない!

 なんとか落ち着かせて話し合いで丸く解決しなければ。


 俺は『リトルボム』を取り出して戦闘態勢に入った。


 初の対人戦。ラウンドワン、ファイッ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る