第14話 洞窟大爆発

再び時間をかけ、次のステージへたどり着いた。ここまでに『ローリング・ボミング』の精度はかなり上がったと思う。おまけにスキルもひとつ手に入った。


「それで、ここが次のステージか」


 着いたのは洞窟の入口。

 なんということだ。俺の移動法が通じなそうではないか。

 ……仕方ない。大人しく歩いていくか……。


 洞窟の中は少しひんやりした空気が流れている。さっきの店で防寒着も買っておけばよかった。ちょっと寒いぞこれ。

 AGI1の速度でゆっくりゆっくり歩いていると、俺より後に来たプレイヤーたちが俺の何倍もの速度で俺を追い越していった。

 全員物珍しそうな視線向けやがって。チクショウ。


 しばらく歩いてようやくモンスターに会った。

 石ころにやる気のなさそうな顔と丸い手足の付いたモンスターだ。一部界隈なら人気ありそう。

 情報をみると、こいつの名前は「イシコロン」らしい。適当だなあ。


 イシコロンは少し助走をつけて俺めがけて突進してきた。

 それを華麗に回避してシルクハットからハトを投げつける。

 少し怯んだが、あまりダメージは入ってなさそうだ。ハト投げただけで死ぬスライムがいかに弱いかよーくわかるね。

 何回か投げて倒そうと思いハトを量産し始めると、再びイシコロンの突進。回避しようとしたが、他プレイヤーがそこに割り込んでイシコロンを剣で叩き落した。

 粒子となって消えていくイシコロン。なんと無慈悲。

 てかおいお前。横殴りはマナー違反だろうが。

 俺が一オンラインゲーマーとして注意してやろうとすると、


「おいおいこいつ相手に苦戦とかありえねえだろ。最初の森でレベル上げくらいしておけよな」


 そう言って笑いながら去っていった。ムカつく野郎だ。次あったらハトでもぶん投げてやろう。


 その後もゆっくりと歩いていくと、どんどん追い越されていった。

 中には「おっせえなぁ」とか「あのバカ必死に何やってんだ?」とかバカにしてくるやつもいる。ちくしょう。


 十数人目くらいに追い越されてバカにされたところで、俺のイライラがMAXになった。


「お前ら黙ってろおぉぉぉ!! 俺はな、これでも必死になって走ってんだよ! 頑張る人をバカにしてさぞいい気分でしょうねぇ!? えぇ!?」


 俺の叫びに周りは嘲笑を浴びせる。

「はいはい頑張ってね〜(笑)」と煽られ、俺は禁じ手を使うことにした。


 そうだ、爆発しよう。


 いつもの移動法ならさっさと移動できる。

 別に周りの奴らに「俺は本気出せばこんなに速いんだぞ」と言いたいわけじゃない。単にこの場所から逃げ出したいのだ。

 この狭い洞窟内において、『ローリング・ボミング』はほぼ自殺行為だ。だが一刻も早く他人からの距離を置きたい。


 俺は足元に『リトルボム』を投げ、前転した。

 0.2秒の無敵時間の終わり際にダメージ判定を被せて爆風で吹っ飛ぶ。

 壁か天井にぶつかって無様に墜落……とはならなかった!

 俺の身体は真っ直ぐと飛び、綺麗に着地をきめた。

 そして背後からは爆発で吹っ飛んだプレイヤーたちの悲鳴。いい気味だ!


 この恐ろしく時間のかかったエリア移動にて、俺はなんとなく『ローリング・ボミング』の飛び方なるものを掴んでいたのか? まあ真っ直ぐ飛べるようになったならいいや。


 悲鳴と共に俺は爆発して洞窟の奥へ奥へと向かった。


 ◇◆◇


 かなり奥の方に来たと思う。目の前にウィンドウが表示されている事に気づいた。


 〚いにしえのクォーツを入手しました〛


 あ? なんだこれ?

 よくわからない物が手に入っていた。とりあえずアイテムボックスから確認。


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【古のクォーツ】

 かつて古代文明を支配した王の力が封印された石。眠りを覚ます者は強大な力を手に入れるだろう……。

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 目覚め? 強大な力? なにか特別な場所で使えるアイテムなのか?


 アイテムの説明が何を言ってるかわからんが、とりあえず俺はその所持数に驚いた。

 なんと147個所持しているらしい。爆発で壊れた岩から出てきたのか? そんなんで出てきていいのかよ古代文明の支配者。


 俺が大量に持ってるってことはその王の力とやらは1つの石ではなく、複数の石に分けられて封印されているのだろう。つまりこいつを集めれば王が目覚めて強大な力……スキルかもしれない……が貰えるってことかな。


 集める、大量に。つまり


「オラァァァ!! 採集祭りじゃあああ!!!」


 俺は爆弾を持って転がりだした。


 その日、洞窟には爆破魔法を操るモンスターがいると掲示板で噂され、気になって調べに行ったプレイヤーはひとり残らず爆死した。

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