第12話 開幕、炎上オークション
「ハァ、ハァ……。ようやくついたぜ……」
一旦ログアウトしてから翌日。
苦労に苦労を重ねてようやくハジマーリの街へついた。
おいコラユグドラシル。お前がわざわざ手加えなくても出れなかったぞ。
あと何個かスキルも手に入った。……が、全部戦闘には使えなそうだ。手品だもん。
街には大勢のプレイヤーがいる。
様々な服装、職業、性別、年齢。このリベルタス・オンラインがいかに多くの層を取り込んでいるかがわかる。
とりあえず俺は宿屋へ行くことにした。次死んだ時にまたあの森に行くのはごめんだからな……。
リスポーン地点を設定すると、「ピロン」と通知の音が鳴った。
メニューを開くとメールが1件。運営からだ。
「なになに……。「EXモンスターについて」だと?」
やたら長い文章だった。
メールの内容は要約するとこうだ。
・EXモンスターは隠し条件を達成すると出てくるEXシナリオで戦うことができる。
・EXシナリオは基本的に条件を最初に達成したプレイヤーのみが挑戦できて、失敗すると次に達成したプレイヤーが挑戦できる。
・EXモンスターを倒すことで、強力な効果を持つEXアイテムが手に入る。
・EXモンスターはよく喋る。
……という感じ。
あのユグドラシルは俺が倒したから他プレイヤーはもう戦えないのか。ユグドラシルの枝も俺しか持っていない。
EXシナリオは早い者勝ちということになる。つまり俺が昨日は決めた目標、「EXモンスターを全員倒す」というのは、誰にも先を越されずにノーヒントの隠し条件を探し出して、クリアしなければ達成できない。
……諦めてもいいかなぁ……。
いやいやまだ早い。
とりあえず気分転換に街へ繰り出してみるとするか。
色んな店が並ぶここハジマーリの街。このレベル0への理解を深めるためにはちょうどいい。
手当たり次第に試して試して試しまくる。
このステータスを上げる方法をッ!
俺は最寄りの武具屋へ向かった。ちなみに街の入口から5分くらいはかかった。ここで『ローリング・ボミング』を使うわけにはいかない。
「この剣ひとつくださーい!」
◇◆◇
クソが。一切金持ってねえじゃねえか。お陰で追い出されたわ。
モンスターを倒しても、経験値しか手に入らない。このゲームの通貨、リベラルを手に入れるためには、モンスターの素材や採取物などを売る必要があるらしい。
「といってもなぁ……」
俺の持っているものは初期装備とこのユグドラシル枝……いや待てよ。ユグドラシルの枝、いらなくね?
レアアイテムとはいえこの縛りプレイをする上で一切必要がない。
なら、買い取ってもらった方がいいよな。結構な値段になりそうだし。
そうと決まれば早速行動!
「おっさん! こいつ買い取ってくれ!」
再び武具屋へ戻って店主のおっさんにユグドラシルの枝を見せる。
すると返ってきたのはおっさんの声ではなかった。あのシステムボイスだ。
《このアイテムは売却できません》
……クソが。ひとつしかない超貴重なものだから売れませんってことかよ……。
……いやまだ望みを捨てるな。プレイヤーになら売りつけることができるかもしれない。たしかメニューに……
お、あったあった。『オークション』だ。
オークション――販売目的で何らかの場に出された物品を、最も良い購入条件を提示した買い手に売却するために、各々の買い手が提示できる購入条件を競わせることである。(某pediaより引用)
ここなら超貴重かつ強力なアイテムであるこのユグドラシルの枝を売れるッ!
早速出品することにした。
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【ユグドラシルの枝】
EXモンスター、『迷宮樹帝・ユグドラシル』のドロップアイテムです。HPが常時回復する効果があります。
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よし、こんなもんでいいだろう。
現実のネットオークションの経験もろくにないが、多分これでいいはず。最初の入札者を待つとしよう。
しばらくしてから、通知が「ピロン」と鳴った。オークションの通知だな。
確認すると、商品へのコメントがいくつか。
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EXモンスターのアイテムとか嘘乙www
流石に嘘は良くないわ……。ネット初心者かな?
通報しますた
釣りやるならもうちょい手の込んだやつで頼む
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……全く信用されてねえ!
いやまあEXモンスターの情報公開直後にそんなのが出てきたから仕方ないけど!
まあ誰かひとりくらいは本物って信じてくれるだろう。気長に待つとするか……。
と思ってメニューを閉じると、通知が「ピロン」。
オークションの画面を開くと「嘘乙」とか「釣り乙」とかのコメントたくさん。
まさかと思って掲示板を開くと、案の定誰かが話題にあげたのか、俺の「ユグドラシルの枝」についてのスレッドが何個かあった。
こうして俺のオークションのページは正しく「炎上」してしまった。くそう! 本当なのに!
俺に対する誹謗中傷コメントが流れていく中、1人のプレイヤーが入札した。
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イグニスさんが入札しました:500,000リベラル
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