第4話 レベル0の挑戦者

 ……なるほど。どうやらこのバグは色んな人に起きているらしい。

 そして運営も気づいてさっきお詫びと補填のメールを全プレイヤーに出した。

 補填内容はバグにあったプレイヤーはしばらく経験値の獲得量が2倍になるとのこと。

 ……これって今の状態でも適用されるのか

な?

 試しに『ハト』を出して近くのスライムにぶん投げた。


 〚220EXPを獲得しました〛


 おっ、もう適用されてる。しかもデータ作り直す前から。……もしかしてだが……。


「全力でスライムしばき倒せば、レベル上がるんじゃね?」


 獲得経験値が2倍になり、倒す量が半分になったなら、65535EXPも夢じゃない。気がする。


 そうと決まれば……!


「『ハト』ッ!」

「ぽーっ!?」

「『ハト』ッ!」

「ぽーっ!?」

「『ハト』ッ!」

「ぽーーっ!?!?」


 俺はスライムを見つけてはハトを出して投げつけていった。


「ハッハッハーッ! 俺のレベルの糧になれーッ!」


 笑い叫びながらスライムを狩る俺を見た他のプレイヤーたちは、全員急ぎ足でどこかへ行ってしまった。

 昼ご飯も挟んでスライムをしばき倒すことおよそ3時間。


 《レベルアップしました》


 効果音と共に機会音声が苦行の達成を告げた。

 そして目の前に表示されるステータスの変化は……!


 --------------------------------------

 Lv0

 ◇HP:1  ◇MP:65535

 ◇STR:1 ◇VIT:1 ◇AGI:1

 ◇DEX:1 ◇INT:1

 ↓            Lv UP!!

 Lv0

 ◇HP:1  ◇MP:65535

 ◇STR:1 ◇VIT:1 ◇AGI:1

 ◇DEX:1 ◇INT:1

 --------------------------------------


 すっげぇ! 何一つ変わってねぇ!……と思ったが、横にスキル獲得を表示したウィンドウが出ていることに気づいた。


 〚スキル:リトルボムを獲得しました〛


 レベルとステータスの変動はなくても、スキルは手に入った。

 そしてLvのところに目をやると、再び「Next:65535」の文字。

 つまり、俺は経験値65535ごとにスキルがひとつ手に入るということだ。

 ……って、やってられるかッ!

 なんだよそのクソ縛りプレイ! 俺はゲーマーだがマゾゲーマーになった覚えはねぇッ!


 流石公認の無理ゲーだわ。まともにプレイできるわけがねぇ……、けど

 レベル0のままボスとか倒したらカッコよくないか?

 スキルが手に入る以上、なにかしら移動系の物を手に入れれば理論上それは可能だ。

 なら、やってみてもいいんじゃないか?

 MP以外は全部1、レベルアップまで数百体、そんな縛りの中であらゆるモンスターを圧倒する俺。うん、カッコいい。具体的な方法はまだ見えないけど。


「やってやろうじゃねえか! この程度バグ如きで俺は止まらねぇッ! このクソ縛りの無理ゲーを俺は全力で攻略してやるぜッ!!」


 そう高らかに宣言すると、更にやる気が湧いてきた。


 これがリベルタス・オンライン――いや、ゲームの歴史に名を残す最も狂ったプレイヤー、『レベル0の挑戦者』の誕生であった。

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