第5話 逃走?いいや闘争だッ!
「『リトルボム』ッ!」
目の前でゴブリンが爆発する。
スライムに続けて見つけたゴブリンは、ハト1発じゃ倒せないので、爆発させることにした。
「『リトルボム』!『ハト』!『リトルボム』!『ハト』!……」
ドカーン! ぽっぽー! ドカーン! ぽっぽー!…………。
ゴブリンとスライムを見つけ次第爆発とハトでしばき倒す。
《レベルアップしました》
『リトルボム』のお陰でしばき効率は上がり、今回は2時間程度でレベルが上がった。
さてさて、今回のスキルはなんだろう。
〚スキル:イリュージョンを獲得しました〛
おお、手品師っぽい。スキルの効果もマントを被ってしばらく姿を消すというものだ。
俺がまともに動けたら便利そうなスキルだな。まともに動けたら。姿消したところで逃げも奇襲もできねえよ。
「そう言えば、街とか行ってなかったな」
そうだった。これは別にスライムとゴブリンを狩り尽くすゲームじゃない。MMOなのだ。
MMOと言ったら街。街と言ったら店。店と言ったらアイテム。
街に行けば多少は役に立つアイテムが手に入るかもしれない。
「そうと決まれば早速レッツゴー!」
マップを開いて現在地と街の場所を確認する。
俺のいる場所は『ラビリンス・フォレスト』――クソデカい森のど真ん中だ。
最寄りの街である『ハジマーリ』はここから東に行った所にある。距離はかなーーりある。てかハジマーリとかネーミングセンス終わってんだろ。
「はぁ……。行くかぁ……」
ため息をついてゆっくりゆっくりと東へ歩き出した。
◇◆◇
ハジマーリへの道のりで気づいたことがある。
このゲームには『回避』のシステムがある。グルリと前転をして攻撃を避ける。無敵時間はおよそ0.2秒。回避があるのは当然といえば当然だがモンスターとまともに戦うことがなかったので気付けなかった。
そしてこの回避は俺が走るより何倍も速い。
俺はアルマジロの如く転がって移動することにした。
途中で会ったプレイヤー全員不思議そうに俺を見ている。時々「気持ち悪……」とか「何だあのバカ」とか後ろから聞こえる。やめてくれ、頑張っている人を馬鹿にしないでくれ。
前転、爆発、ハト投げを繰り返して東へ進むこと約10分。マップ上の俺のアイコンは、ほんの数センチしか動いてない。
「嘘だろ……。何時間かけるつもりだよこれ……」
回避による移動はもちろん目が回る。すごい酔う。
早くやめたいとこだが、目的地まではまだまだある。
「はぁぁ…………」
プレイを始めてから何回目かわからないため息をついたとき、木がガサガサと揺れる音がした。
「誰だッ!?」
音の方向に視線を向けると、俺の身長と同じくらいの
「グルルルゥゥ……ヴァンッ! ヴァンッ!」
そして吠えながら3匹同時に襲いかかってきた。絶対絶命!
鋭い爪の攻撃を、うまいこと回避で避ける。予備動作がそこそこあるから攻撃のタイミングはわかりやすい。0.2秒の無敵時間に攻撃を合わせて全て無効化した。
しかし、避けた先にはもう一匹。
「あぶねっ! 『イリュージョン』!」
その場しのぎに身を隠した。
攻撃する相手を失った狼男は不思議そうに吠えた。
鼻をスンスン鳴らし匂いを確認しても、俺を見つけることはできなかった。この『イリュージョン』は姿と匂い、両方消せるのか。
「さて……。どうするか」
束の間の安全を手に入れたはいいが、逃走という手段は既にない。スキルの効果時間が終わる前にある程度の距離を取るのは不可能だ。
逃走が無理なら闘争しか道はない。
『リトルボム』ならこいつらを倒せるかもしれない。
スキルの効果時間が終わるのと同時に、俺は叫んだ。
「『リトルボム』ッ!」
シルクハットから取り出した爆弾を投げつける。
着弾と同時にドカーン! と音がなり、狼男2匹がぶっ飛んだ。ゴブリンもスライムも一撃で倒せてたから知らなかったが、しっかり物ぶっ飛ばす効果はあるんだな。爆発だもん。
「よし、これならいける!」
爆発で飛んでいった狼男たちはすぐにその分の距離を詰めてきた。
ダメージはしっかり入っているが、まだ浅い。あと何発か打ち込まないとだな。
「アォォォォン!!」
飛ばされなかった1匹が吠え、3匹の連携攻撃が始まった。
3匹来るとわかってれば問題はない。
全ての攻撃を華麗に躱し、こっちも攻撃を仕掛けた。
「喰らえッ! 『リトルボム』『リトルボム』『リトルボム』『リトルボム』『リトルボム』ーーッ!」
65535という膨大すぎるMPに物を言わせ、狼男どもを爆破しまくった。いやー爽快爽快。
俺に近づいて爆破され、また近づいて爆破されを繰り返すこと数回。3匹は光の粒子となって消滅していった。
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