第2話 ステータス・オープン……うん、バグだわ

「うおぉ……すっげ……」


 目を開けるとそこは森の中。

 美しすぎるグラフィックに思わず息を呑んだ。

 想像以上だ。科学の力ってすげー!


「さて、ゲームなら1番最初にやりたいアレをやるか。……ステータス・オープンッ!」


 その言葉と共に、青色ウィンドウのステータス画面を表示する。

 別に「ステータス・オープン」なんて言わなくても開くが、せっかくだから言いたいものだ。


 さてさて、この『ゼロ』のステータスは……。


 画面に表示される1番大きな数字に目が行った。

 そこに書いてあるのは「65535」の表記。MPの部分に書いてある。

 うんうんMPは高い……なわけないだろッ!

 ちょっと待て。65535!? 明らかにおかしいだろ!


 さらに他の数値に目をやると、


「はァ!? レベル0ッ!?」


 なんということだ。名前の横のLvの値は0ではないか。名前通りゼロになっちゃったってね……クソ笑えねえよ。

 ……落ち着け落ち着け。

 もしかしたら見間違いかもしれない。

 画面を一回閉じてから再確認してみよう。


 ステータス・オープン。


 --------------------------------------

【ゼロ】 Lv0 NEXT:65535

 HP ■■■■■ 1/1

 MP ■■■■■ 65535/65535

 ◇STR:1 ◇VIT:1 ◇AGI:1

 ◇DEX:1 ◇INT:1

 --------------------------------------


 あぁ、これバグだわ。

 サービス開始と同時にバグに見舞われる俺可哀想だなぁ。

 てかステータスMP以外1だし。次のレベルまで65535だし。明らかにおかしい。


 仕方がないので大人しくデータを作り直そうとおもったが……


「……せっかくだからちょっと遊んでみるか」


 俺はモンスターがいそうな場所へ走った……が、AGI素早さが1なので、それはそれは実にゆっくりだった。

 既にゲームをスタートしているプレイヤー何人かにも会った。みんな軽やかに快適そうに動いてやがる。


 数分歩いて、ようやくモンスターが見えた。

 RPGの定番、スライムだ。


「さて、ようやく初戦闘か……」


 俺は武器を取り出し……できなくね!?

 俺手品師じゃん! 武器とか装備してない!

 まぁまぁ、武器がなくてもスキルがある。

 俺はスキルの画面を開いた。


 --------------------------------------

 [スキル]

 ・ハト MP1

 --------------------------------------


 ……以上ッ!


 おい待てスキルが『ハト』!? ハトってあの鳥の!?


 とりあえず使ってみるか……。


「『ハト』ッ!」


 そう叫ぶと手にシルクハットが現れ、真っ白なハトが出てきた。おぉ〜すげぇー……じゃねえよ。

 これで何しろと言うんだ。


「ぽっぽー、ぽっぽー」


 かなり困っている俺の周りをハトは呑気に鳴きながら飛び、やがて俺の肩にとまった。


「フンッ!」


 顔といい鳴き声といい全てがムカつく。自分で出したんだけど。

 俺は怒りに任せ、ハトをスライムへぶん投げた。


「ぽーっ!?」


 マヌケな鳴き声を上げながらスライムに激突。そのまま両者は光の粒子となって消滅した。


 〚110EXPを獲得しました〛


 しっかりスライムは倒せたらしい。

 で、1匹で経験値110か……。次のレベルまであと65425、スライム換算でおよそ600匹……。

 ……できるわけねーだろこんな無理ゲー。


 メニュー画面を開き、諦めてログアウトしようとしたところで、『掲示板』のアイコンを見つけた。

 このゲーム、まだ掲示板なんて使ってるのか。運営のこだわりか?

 データ消す前に、今俺が絶賛被害受けてるこのバグについて何かあるかもんしれん。見てみるか。


 掲示板のアイコンを押す。

 すると、既に使いこなしているプレイヤーが立てた数多くのスレッドが表示された。


 --------------------------------------

 [LO最速攻略スレ 3周目]

 [LO最弱職これで決まりだろw]

 [【速報】ガチ勢さん、早くもLv30達成]

 [リベルタス総合スレ]

 [【悲報】LO、初日でヤバすぎるバグが見つかるwww]

 [モンスター研究所 Part1]

 --------------------------------------


 ……おっ、このバグとかなんとか言ってるやつ、もしかしたらこのレベル0と関係あるかも。

 ちょっと覗いてみるか……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る