第3話 茶番

 獣人たちが森の中へ消えてゆくのを見送ったフレアは、一旦その場を離れると他の部屋を開けてゆき、一人一人眠らせてゆく。そして家の前へ連れ出してゆく。爆発に巻き込まない様にするためだ。


そして最後に主人の部屋に訪れる。ドアを蹴破ると中には寝巻き姿の男が銃を持ってこちらを狙っていた。きっとこの銃で獣人たちを脅したりしたのだろう。


フレアは一応両手を上げる。


「今すぐ武器を置け! さもなくば撃つぞ!」


その目は本気だった。肩にかけていたロケランを床に置き、足につけているナイフも外し床に置く。


「そうだ、余計なことを考えるなよ。全て地面に置け」


そこでロケランに気付いたのか、急に気持ちの悪い笑みを浮かべる。


「お前、もしかして爆発魔のフレアか?」


「それがどうした」


フレアは不機嫌そうに言う。


「はっはっは。世界最強とも言われるお方が銃一本を前に身動きが取れなくなるとは、愉快愉快。そうだ、お前俺の奴隷になれ。そうすれば命だけは助けてやろう。」


下卑た視線を向けてそう男はのたまう。フレアが何を言わず、ただ睨みつけるだけなことに調子に乗った男はさらに続ける。


「何だその目は。状況わかっていない様だな。そうだ、なら分からせてやるよ。」


その瞬間、バンという音と共にフレアの耳元を銃弾が通り過ぎた。


「これで分かっだろ。殺されたくなけりゃ……そうだな、服を脱げ」


だが一向に動こうとしないフレアに腹を立てた男はもう一発発砲し、怒鳴る。


「聞こえなかったか? 殺されたくなけりゃ脱げって言ってんだ。次は本当に当てるぞ」


そう言われたフレアは諦めた様にジャケットに手をかけ、地面に置く。ジャケットの下はセパレートタイプの薄着で、肩とへそ、太ももが露わになる。


「これで満足か?」


フレアは低い声で尋ねる。


「は? なんて言った?」


男には聞こえなかったらしく聞き返してくる。


「これで満足かって聞いているんだ」


「は? 満足な訳ないだろ。全部に決まってるだろうが。お前状況が分かってんのか?」


今度は男に届いたらしく、苛立ちを隠さず怒鳴ってくる。


「そう? 私はもう満足だよ。それに状況がわかってないのはあなたの方だから」


さっきとは打って変わって、フレアは明るい声を出す。こっちが素のフレアなのだ。それと同時に大きく横に飛び、男に近づく。


「茶番に付き合ってくれてありがとね。最近依頼がなかったからする機会がなくて」


その言葉を最後に男は意識を手放した。部屋には銃弾の跡がたくさんついていたが、もちろんフレアに当たったものは一つもなかった。

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