憧れの親友
「ハルカ様!」
魔導人形の姿がもうあんなにも小さい。
サリアリットの叫びも、もはや春賀のところへは届いてはいないだろう。
「放て――――――ッ!」
衛兵ではない、軍人である兵士たちが一斉に上空へ矢を放った。
だが、所詮は弓。
ワイバーンにところまで到達するには飛距離が全く足りない。
安全圏から響く彼らの鳴き声は、まるでそれを嘲笑っているかのようだ。
しかし攻撃は届かずとも、牽制という意味では十分な効力があった。遠距離攻撃の手段がなく、硬い鱗も持たない彼らは空の上で立ち往生している。
「姫様、今のうちにこちらへ!」
兵士の一人がサリアリットを避難させようとするが、
「なりません!」
サリアリットはそれを拒否した。
「わたくしはこれを、何としてもハルカ様にお渡ししなくてはならないのです!」
サリアリットは魔力の詰まったボトルを強く抱きしめた。
ここで放棄したら、自分は何のためにここに残ったのか。
ここで逃げてしまったら、こんな自分を頼ってくれた彼にどう顔向けができようか。
(だけど、どうすれば……)
サリアリットは考える。
焦る頭の中で必死に方法を模索する。
魔法を使えばという発想もあった。
しかし彼女の魔法は扇子で扇いだ羽根を風に乗せてコントロールするだけで、とても役に立ちそうにない。
そもそもあんな上空では射程圏外。
やるせなさが、再び彼女を責めた。
「信じなさい。あなたの力を」
その声に、沈んでいきそうだった心が引き戻された。
白いローブが翻った。
(ああ……)
サリアリットはその姿に言い知れぬ安心感を得ていた。
いつだって自分の味方でいてくれた、親友の姿が。
どんな時でも自分を見失わず、立ち続ける憧れの姿が。
だから少しだけ。
本当に、ほんの少しだけ悔しいと思ってしまった。
「信じなさい。魔法の力を!」
フィアーナはいつものようにニッコリ笑って、自信満々にそう言った。
手には彼女の象徴である、箒を………
「あれ?」
焼き鳥の串を持っていた。
サリアリットは笑ってしまった。
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次回更新は、12月22日(金)AM7:00とPM18:00、一本ずつを予定です。
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