死んでる!?
ばっきゃーん!
窓ガラスがけたたましい音と共に吹っ飛んだ。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああッ!?!?」
サリアリットはお姫様がしてはいけない顔で絶叫した。
「侵入者か!?」
「であえーであえーッ!」
瞬く間に衛兵がやってきた。
なぜか時代劇テイストの号令が飛び、非常識な侵入者を取り囲んだ。
「どうもどうも皆さん、出迎えご苦労様です」
フィアーナだった。
ジェット魔法でこの場に突っ込んできた迷惑系魔法使いは、ゴーグルを外してニッコリ笑顔。
場違い感ハンパなかった。
「フィー!」
「サリー、お久しぶりですー」
フィアーナは衛兵をかき分けて駆けてくるサリアリットにひらひら手を振った。
むぎゅー。
抱きしめられた。
「心配したんだから……」
「もー、大袈裟ですね」
フィアーナはサリアリットを安心させるように背中をぽんぽんする。
どことなく白薔薇が百合の花になった気がした。
そんな仲睦まじい二人の間に、メリマリが割って入ってきた。
「貴方、姫様に向かって馴れ馴れしい! 姫様はこのレイブルノウ王国の至宝なのですよ! 無礼な行いは即刻おやめなさい!」
「ばあや、やめて……」
「いいえ、この際はっきり申し上げます。貴方のような―――」
「そんなにつんけんしないでくださいよ。しわが増えますよ?」
「なんですって!」
怒り狂う侍女長にもフィアーナはマイペースを崩さなかった。
「いくら私が若くて可愛くて巨乳だからって、嫉妬は見苦しいですよ?」
「「「「「「「巨乳?」」」」」」
周囲の視線がフィアーナの胸元へ集中する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「壁じゃん(シムケン王)」
グーでぶっ飛ばした。
壁にビーンと突き刺さる。
「ごめんなさい、フィー」
「いいんですよ。慣れてますから」
「ありがとう。でも、こんな来訪の仕方はやめてちょうだい。皆を困らせてしまうわ」
ぶっちゃけテロである。
しかし迷惑系魔法使いはケロッとしたもの。
「久しぶりの二人乗りだったので私としたことが、ちょーっとだけ手元が狂っちゃいました」
「二人乗り!?」
サリアリットの綺麗な顔が途端に青くなる。
「……サリー? 私をどこへ連れていくつもりですか?」
「決まってるでしょう。あなた二人乗りが絶望的に下手じゃない。どうせここまで辿り着く間に五回くらい事故ってきたんでしょう? すぐに謝りに行きますわよ」
「失礼な。事故ったのは三回です」
なぜかドヤ顔だった。
「道を走ってた行商の馬車と王都の城壁。あとはそこの窓ガラスだけです」
サリアリットは、ふらっと倒れそうになった。
「本当にあなたって人は……」
「まあまあ」
なにが、まあまあなのだろうか。
事故被害者の方々が不憫でならない。
「一刻も早くお連れしたくて、ここまでかっ飛んできたんですよ」
「え? それってまさか……」
フィアーナはニッコリ頷く。
このタイミングで彼女が連れてくる人物など一人しかいない。
すなわちフィアーナが召喚した地球人。
救世主である。
「どうしましょう。このような恰好でお目通りするなんて、何か粗相があったら……」
サリアリットは慌ててエプロンを外し、ささっと軽く身だしなみを整える。
そして深呼吸を一つ。
表情と雰囲気を一国の姫君に切り変えた。背筋を伸ばし、ドレスのスカートを軽く上げて、フィアーナの背後へと礼儀正しく会釈する。
「地球世界よりようこそいらっしゃいました、救世主様。わたくし、レイブルノウ王国の姫、サリアリットと申します。以後お見知りおきを」
「………………………」
返事がない。
「?(顔を上げる)」
ピクピク………。
春賀は泡を吹いていた。
「死んでる!?」
ギリ生きてた。
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おきな
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