マジカルいくぜ☆

 それは神秘のエトワール。

 ウィッチでエッチなウィザードリィ。

 魔法仕掛けのマギアギア。


「正義の魔法少女マギアギア☆エリス、完成だぜ!」


 きゅぴーん!


 全長二メートルオーバーの機械乙女がきゃぴきゃぴ☆ピースサインで内股ポーズ。煌めくモノアイがぱちくりウインクした。


 炎も恥じらう灼熱の青春。

 想いを叶える真紅の流星。

 フィアーナの魔力で変身した、この姿こそ―――


〝魔法少女マギアギア☆エリス ドレスコード・イフリート〟なのだ!


「成功、したんですね……」


 フィアーナは、だばーと感動の涙を流した。


「………………………………………………………………………………………」


 ミノタウロスは無言だった。

 変身したエリスのあまりにプリティさに、荒ぶるモンスターさえも見惚れずにはいられない。


「…………………。ブ、ブモオオオオ―――――っ!」


 我に返ったらしい。

 ここで戦意を喪失しないのは、さすがは戦士といったところか。

 ミノタウロスはその強靭な腕を振り上げ、暴走した重機のような迫力を伴って突進してくる。

 こんなものを食らったら、か弱き乙女はひとたまりもない。


 しかし、ミノタウロスは知ることになる。

 今自分が相手にしているのが、武装した黒光りマッチョの老人でもなければ、他種族のモンスターでもない―――


 魔法少女であることを。


「ブヒっ!?」


 激突! そして、驚愕っ!

 ミノタウロスの野性から、信じられない! が飛び出した。

 肉体を使った最も原始的かつ強力な武器にして、暴力の象徴。

 拳。パンチ。つまり―――〝拳打〟。

 それが躱されるわけでも防がれるわけでもなく、真っ向から迎撃されたのだ。


「どうした牛野郎? パワーがご自慢じゃなかったのか?」


 ミノタウロスの巨大な拳を、自らも拳で迎え撃った魔法少女。

 両者の体格差はまさに大人と子供。

 互いの力がぶつかれば、小は大にねじ伏せられるのが必定。

 しかし、そんな脆弱な条理は不条理の拳の前に覆された。


「ブッ、ブモオオォォ――――ッ!」

「おせえっ!」


 エリスは素早く反応した。

 ミノタウロスが左腕を振り上げた瞬間、その脇を一気に通り抜け、懐へ侵入。がら空きのボディに右ストレートをねじ込んだ。

 硬い腹筋を貫く衝撃に、巨体がくの字に折れる。

 ミノタウロスの動きが止まった。


 もぎ取ったチャンスを魔法少女は逃さない。

 悩ましき脚線。乙女のふくらはぎ。それを包むニーソックス装甲が開き、内蔵されていたスラスター機構が露出。ミノタウロスの下がった膝を踏み台に跳躍したと同時に、爆発的な推進力を生みだした。


「ちょいなあっ!」


 ミノタウロスの顔面に閃光のような膝蹴りが炸裂した。

 衝撃が頭部を貫き、右の角がへし折れ、巨体が嘘のように地に倒れる。


 その背景で紅蓮のセーラー服が、シャラン☆と着地。

 クルっとターンし、遠心力で広がったスカートが空気摩擦で火花を散らした。


「マジカルいくぜ☆」






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